【市川いずみの届け夏エール】勝利の立役者は「一番の履正社ファン」記録員・曽場君

[ 2019年8月23日 05:30 ]

第101回全国高校野球選手権大会 決勝   履正社5―3星稜 ( 2019年8月22日    甲子園 )

優勝し涙する履正社記録員・曽場(中央)(撮影・後藤 正志)
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 初優勝の立役者は「一番の履正社ファン」でした。記録員の曽場大雅君。同校から自転車で約15分の場所で育ち毎日家の近くを通るかっこいいお兄ちゃんたちに「すげぇ」と憧れてきました。入学前までは期間中、毎日甲子園で観戦するほどの野球好きです。

 憧れの履正社には内野手として入学しましたが、けがと命に関わるアクシデントに見舞われた高校野球生活となりました。1年夏に両足を疲労骨折し4カ月間練習できませんでした。新チームが始動した昨秋には交通事故に遭いました。練習を終え自転車でグラウンドを出た瞬間、猛スピードで坂を下ってきた車と接触。タイミングが少しでもずれていれば命に関わる大事故でした。命に別状はなかったものの臀(でん)部を負傷する大けがで1カ月の入院生活を余儀なくされました。

 練習ができるようになったのは今年に入ってから。仲間との差は大きく開いていました。「攻撃の仕組みを考えたりするのが好きなんです」。相手チームのデータを分析し、試合中もアドバイスできるように記録員として最後の夏を戦いました。

 決勝戦前夜は星稜のビデオを7試合分みて研究。終わったのは日付が変わった午前1時。「傾向が見えるのは面白くてたまらない」と全く苦になりませんでした。決戦のこの日はお気に入りのピンクのバインダーに6枚の資料を挟んでベンチ入り。「先頭打者への奥川君の初球は外の直球のはず」の指摘通り、桃谷君への初球は149キロの直球でした。さらに「スライダーに合わないと徹底的に攻められる」と試合前に助言。初回の1打席目にスライダーに苦戦した井上君は次の打席で初球のスライダーを仕留め、逆転3ランを放ちました。

 井上君に、決勝打の野口君はそろって「曽場のデータ完璧です」と大絶賛。閉会式後には、エース清水君が「日本一の記録員や!」と優勝メダルをかけてくれました。「こんなに野球がうまくてすごい人がチームメートなんて誇らしいです!」。思いが溢れた曽場君。ゲームセットの瞬間、特等席からの仲間の姿は目が潤んでよく見えませんでした。

 自室の壁は仲間の名前入りタオルで埋め尽くされているといい「なかでもお気に入りは桜が散っている西川のタオル」と目を輝かせます。今大会、球場に向かうバスの中では仲間のグラブをはめて嬉しそうに眺めていたそうです。「もうドラマですね」。曽場君も立派な優勝メンバーの一人。大好きな履正社の仲間と新たな歴史をつくったことに間違いありません。日本一おめでとう!

 ▼市川 いずみ 京都府出身のフリーアナウンサー。山口朝日放送時代に高校野球の実況で「ANNアナウンサー賞最優秀新人賞」を受賞。高校野球検定に合格し、自宅に甲子園の土を飾るほど生粋の高校野球好き。

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