県外出身者ばかりで甲子園に勝ってうれしいかって?

[ 2022年8月17日 16:05 ]

<敦賀気比・聖光学院>8強入りを決めた聖光学院ナインがスタンドへと駆け出す(撮影・岸 良祐)  
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 【君島圭介のスポーツと人間】甲子園で聖光学院の快進撃が続いている。強い。上手い。たくましい。日大三、横浜、敦賀気比ら全国制覇経験校にも臆することなく、素晴らしい野球でファンを魅了している。福島を郷土とする一人として大会を追うのが楽しくて仕方ない。

 「県外出身者ばかりで勝ってもうれしいの?」
 よく聞かれるが、一言で返す。
 「うれしいに決まってるじゃん」

 彼らは「野球がうまくなろう」「いい高校に入って強くなろう」と心に決め、憧れのユニホームを着るために15歳で親もとを離れ、高校生活のほぼすべてを野球に打ち込んできた若者たちだ。そんな彼らが「福島代表」の看板を背負って猛暑のグラウンドで戦い、同じ熱い思いで集まっている全国の強豪校を打ち破っている。聖光ナインには福島のチームを選んでくれたことに感謝しかない。

 2010年夏にベスト8まで進んだ聖光学院の2年生エース・歳内宏明は兵庫県出身だが、福島代表が勝てる相手とは思えなかった広陵、履正社ら強豪を堂々倒し、地元の誰よりも福島に愛された。東日本大震災が起きた年、3年生になった歳内は復興への希望という重いものを背負わされて出場した夏の甲子園2回戦で敗れ、「チームにも福島の人にも申し訳ない」と泣いてくれた。

 のちに阪神入りした右腕を「福島の人」は忘れなかった。NPBが12球団の選手が参加する震災復興イベントを福島県で開催してきた。参加選手について「わざわざ来てくれるならどなたでも有り難い」という福島側の姿勢だったが、呼んで欲しい選手として毎年ただ1人だけ要望してきたという。それが歳内だった。

 歳内と同じように今夏は佐山未来や山浅龍之介、安田淳平らを親せきのおやじのように応援している。彼らのような高い志を持った仲間と切磋琢磨することで巨人・八百板、ロッテ・佐藤都ら福島生まれの逸材もプロの第一線で活躍するほどに成長した。

 また、常総学院を選んだ楽天・内田や仙台育英に進んだロッテ・西巻のように県外で名前を上げてプロ入りした猛者もいる。彼らもまた歳内のように茨城県、宮城県の高校野球ファンに愛されると信じている。

 いつでも聞いて欲しい。県外出身者ばかりで勝ってうれしいかって?
 「当たり前じゃん。うれしいに決まってる」
 何度でもそう答える。(専門委員)
  

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2022年8月17日のニュース