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「岸壁の母」舞台・舞鶴は「肉じゃが」発祥の地

[ 2016年12月14日 05:30 ]

 大好きな「肉じゃが」に発祥の地があるのを知って、ご当地・京都府舞鶴市に出掛けた。戦後の引き揚げで知られる海軍ゆかりの町で、赴任した東郷平八郎が初めて作らせたのだという。今では肉じゃがを提供する店が市内に18軒。昨秋登録された世界記憶遺産(世界の記憶)や日本遺産が注目される中で、肉じゃがは貴重な“潤滑グルメ”になっていた。

 ♪母は来ました 今日も来た この岸壁に…二葉百合子のヒット曲「岸壁の母」の舞台になった舞鶴港。明治時代からの軍港で、引き揚げ者が船から上陸後、東舞鶴駅に向かったという三条通を歩くと、三笠通、朝日通、敷島通など往年の船艦名が付いた通りが交差する。同じ港でもこ ちらが東エリアで海軍ゆかりの施設が並び、西エリアには商業施設が点在。海抜325メートルの五老スカイタワー展望室(入館料200円)に上ると、港全体が一望の下。青い海と緑のリアス式海岸のコントラストが美しい。

 この舞鶴に肉じゃがが“上陸”したのは1901年(明34)、東郷が海軍鎮守府初代長官として赴任したことがきっかけ。東郷は留学していた英国で食べたビーフシチューの味が忘れられず部下に作らせたが、当時の日本ではワインやバターなどが手に入りにくく、しょう油と砂糖で味付け。結果、肉じゃがが誕生したといわれ、作り方は「海軍厨(ちゅう)業管理教科書」として舞鶴の海上自衛隊第四術科学校に残っているという。

 肉じゃが普及に取り組むまいづる肉じゃがまつり実行委員会によると、旧海軍のレシピで作る肉じゃがは(1)肉にじっくり味付け(2)タマネギは3分だけ加熱(3)ニンジンとグリーンピースを加える――のがポイント。引き揚げに関する所蔵資料570点が「舞鶴への生還」として世界記憶遺産に登録された「舞鶴引揚記念館」(入場料300円)内の「ベルカフェ」で味わったが、家庭で作るより深みがありまろやか。「呉市(広島)とは元祖争いをしていますが、絶対に負けません」という伊庭節子同実行委会長自慢の料理だ。

 同館では引き揚げ者の衣類や生活用品、手紙、記憶で描かれた絵画など約1万6000点を所蔵。近くには66万人以上の引き揚げ者を迎えた引揚桟橋の一部がたたずむが、彼らにとっても何よりのごちそうになっただろう肉じゃが。そんな気にさせるほっ こり感がたまらなかった。 

 ≪西エリア道の駅 お手軽コッペかにも甘く内子絶品≫西エリアではもう一つの“味”が楽しめる。西舞鶴駅からタクシーで5分の道の駅「舞鶴港とれとれセンター」の鮮魚店には旬を迎えた「舞鶴かに」が並ぶ。福井の越前がに、鳥取の松葉がにと同じズワイガニで、ブランドかにとして緑色のタグが付けられ、姿、味、高級感とも負けていない。その場で食べられると聞いて注文したが、オスは1匹5000~2万5000円と高価なので、同400~2000円のゆでたメスのコッペかにに。体は小さいが身は甘く、内子は香ばしい。また舞鶴は“かまぼこの街”とも呼ばれ、「舞鶴かまぼこ工房」ではかまぼこ作りが体験できる(要予約、2000円)。かまぼこ、平天、ちくわの3種類を作るのだが、きれいに山形にならず、竹の棒に丸められずで悪戦苦闘。それでも完成した時は大満足で、味もまた格別だった。1月10日まで休館。

 ≪「赤れんがパーク」でノスタルジーに浸る≫多くの日本遺産の中で訪ねたいのが東舞鶴駅から徒歩15分の「舞鶴赤れんがパーク」。旧海軍の軍需品や水雷倉庫として明治35~36年に建てられたもので、8棟が2008年(平20)に国の重要文化財に指定され12年にオープンした。映画やドラマのロケ地として使われるノスタルジックな雰囲気の中で食事したり、お土産などのショッピングが楽しめ、郵便物を投函(とうかん)できる赤い丸型ポストも。

 ▽行かれる方へ JR西舞鶴駅か東舞鶴駅下車。車は舞鶴若狭道舞鶴西ICか舞鶴東IC利用。ベルカフェの肉じゃがは単品450円、ランチ700円。土日祝日限定。問い合わせは舞鶴市商工観光課=(電)0773(66)1024。

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