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【さくらいよしえ きょうもセンベロ】不思議家族のゆったり空間

店主の西田隆さんと妻の美和子さん(左)
Photo By スポニチ

 過去に訪れた酒場は3000軒以上というセンベロライター・さくらいよしえが訪れたのは東京・目黒。メディア初登場の「やきとん 玉や」。鮮度のよい肉を用いた焼きとんはもちろん、吟味されつくしたアテも絶品。ゆるりゆるりと春に酔った。

 目黒通りの1本裏手に極上のもつ焼きグルマンの店を発見。独特の名調子で手を叩き、客を迎えるのは劇団に所属する看板娘。つまり舞台役者だ。そして、純白のコック服に身を包み串を焼くのは妙にスマートな父上。そして上品な母上が客席をやわらかに回る。

 一見、ごくごく普通の大衆酒場。だがしかし、全体的に浮世離れした一家によって不思議なゆとりの空間に仕上がっている。

 「ランプレドット」は口の中でほどける牛のギアラにパセリソースがけでバゲット付き。超おしゃれ。

 「それは娘の提案なんですよ、イタリアの味と評判でねえ。ふぉふぉ」と言いながら父上はもつの串をタレ壺(つぼ)にとぽんとつける。

 そう、西洋の風を吹かせるだけじゃない。実は「門外不出」のこの漆黒のタレ、出身地でもある麻布の老舗から縁あって継承したもの。角がりりしく立ったレバーはかみしめるとキュリンと小気味良い音が鳴り、キレのある甘辛タレと溶け合う。あぶらがのったかしらに、口の中で跳ねかえるシロもたまらない。

 毎朝、芝浦から朝締めの豚が1頭届く。「まだ温かいの。レバーなんか叩くと寿司屋の赤貝みたく反るの。組織が生きてるんですねえ」と父上。

 エレガントな語りとともに織りなされるもつ料理に狐(きつね)につままれた気分。聞けば父上にはいわゆる長い下積み時代はない。学生時代は仏文専攻、その上「フーテンやってたから働くことを考えてなかったねえ」。

 なんとなく入った飲食の道だが、まだスパイスが珍しい時代にインドカレーの研究にいそしんだことも。「黄色いカレーなのに食べ終わったあと皿が赤くなる本場のを作るって(笑い)」と母上。職人というより、舌を極めた研究肌か…。しかしそんなある時、バイクで首の骨を2カ所折る大事故に。真面目に働けってことかナと以来、地道に精進。

 「今もお医者さんからは、二輪車ダメ、雨もダメ、あと友達もダメって」。友達?「友達ってオイ、って肩を叩くでしょ。その衝撃が危ないんだって。笑っちゃうよねえ」。ああなるほど!

 家族はさぞ父上の体をいたわっているに違いない。と思ったら、休憩中、娘の肩を熱心にもむ父の姿があった。ちょっとおかしなアットホーム。幸せに酔いしれ、金宮ボトルは空っぽになった。(さくらい よしえ)

 ◆やきとん 玉や 2000年にオープン。店主の西田隆さん(69)、妻の美知子さん(69)、娘の麻耶さん(38)の家族を中心に、「実家が鮮魚店」という腕の良い板前さんで店を切り盛りしている。ホールスタッフは俳優、女優でイケメン、美女ぞろいだ。店内は禁煙(2階に喫煙スペースがある)。タバコが嫌いな人にとっては天国。焼きとんのほかにサイドメニューも充実。品川区上大崎2の13の42。(電)03(3444)3911。営業は午後5時から11時。日曜・祝日定休。

 ◆さくらい よしえ 1973年(昭48)生まれ、大阪出身。日大芸術学部卒。著書は「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)、「今夜も孤独じゃないグルメ」(交通新聞社)、「きょうも、せんべろ」(イースト・プレス)など。

[ 2018年4月13日 12:00 ]

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