羽生九段 王手へ“ブレーク”決める 課題の後手番も「テニスほどの違い、将棋にはない」

[ 2023年2月25日 05:20 ]

<第72期ALSOK杯王将戦 第5局前日>石見神楽の演目で使用する衣装、道具と共に記念撮影に臨む藤井王将(右)と羽生九段(撮影・西尾 大助、河野 光希、藤山 由理)
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に羽生善治九段(52)が挑む将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)第5局第1日は25日午前9時に島根県大田市の「さんべ荘」で始まる。24日は同所で対局場検分が行われた。2勝2敗で迎え、先手は藤井。朝日杯制覇の翌日が移動日という多忙さを、当地のさんべ縄文の森ミュージアムで癒やし、羽生は後手番からのブレークを期した。

 課題の後手番を三たび迎える羽生は「過去の1、3局は自分の形勢が良くなった場面が一瞬たりともなかった。今回は少しでもそういう場面をつくれたらと思います」と控えめな抱負を口にした。

 第1局が一手損角換わり。第3局が振り飛車をちらつかせての雁木(がんぎ)囲い。後手番ながら趣向を凝らしに凝らしたものの、本人が認める通り、リードを奪うまでには至らなかった。だが番勝負を制するためには後手番での勝利が必須条件。将棋界ではテニスに例えて「ブレーク」と表現する棋士が多い。渡辺明名人もその一人だ。

 それでも羽生は言う。「テニスのサーブと受け手側ほどの違いは将棋にはないという気がします」。テニスは、特に強烈なサーブを武器にする選手が多い男子では、サービスキープ率はトップクラスで90%前後。つまりレシーブ側からすると、ブレーク率は10%ほどしかない。一方で先手勝率5割強の将棋は、ブレーク率の高い性格を持つゲームだ。

 「将棋で先後の差があるかというと、そうでもないですから。今局も自分なりに考えてきた作戦をやりきれたなら、と思っています」

 対局場検分では正立会の福崎文吾九段(63)から「こんにちは。正立会の福崎です」とユーモアたっぷりの関西アクセントであいさつを受け、噴き出しそうになる場面も。「いろいろ変化球を持っている方ですよね」と柔らかな笑顔を見せた挑戦者こそ多彩な変化球の持ち主だ。さて気になる「次の一球」は? (我満 晴朗)

 ≪「石見神楽」でお出迎え≫前夜祭では地元の伝統芸能である「石見神楽」が披露され、温かく迎えられた両対局者。昨年藤井は祝賀会で同所を訪れ、今回が2回目の来訪。「温泉でリフレッシュさせていただいた」と振り返る。一方過去のタイトル戦で何度も訪れている羽生。「さんべ荘に初めて来たのは20年前。歴史ある場所で対局できるのはうれしい」と話した。

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