ついに出るか羽生九段“宝刀”後手横歩取り 谷川17世名人が王将戦「大田対局」展望

[ 2023年2月25日 05:25 ]

王将戦7番勝負を読む 谷川浩司17世名人EYE

記念撮影に臨む藤井王将(右)と羽生九段(撮影・河野 光希)
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=、羽生善治九段(52)による7番勝負は第4局を羽生が制して2勝2敗のタイとなり、改めて3番勝負となった。王将4期の谷川浩司17世名人(60)が第4局を解説するとともに第5局を展望した。

 戦型選択は第1局から全て羽生が主導し、一手損角換わり、相掛かり、雁木、角換わり腰掛け銀と進んだ。羽生が後手番で迎える第5局。「7番勝負開幕前、有力視しましたがまだ出てません」として取り上げたのが、羽生が後手で得意とする横歩取りだった。

 谷川は羽生戦が62勝106敗。中原誠16世名人(75)と故米長邦雄永世棋聖の187局に次ぐ歴代2位の対局数を誇る、羽生を最も知る棋士。後手横歩取りは羽生が長年愛用し、開幕までの藤井戦8局中、唯一勝利したのが20年度王将リーグでのそれだった。「羽生九段はここぞの場面で投入する」と指摘する一方、藤井の横歩取りも「以前はやや苦手にしていましたが、最近は精度も高く、トップクラスの指し回しです」と解説した。

 全て先手が制したここまでの4局。今年度の全公式戦における先手勝率は51・7%。ただ、棋士の皮膚感覚は「実力が同じなら55対45くらいかも」とし、とりわけ藤井は先手で26連勝中。しっかり考えて指せる2日制で、先手藤井に勝つことの意味はとりわけ大きく、流れも左右しそうだ。

 敗れると後がなくなる羽生にとって押さえておきたかった第4局。谷川は勝負の岐路として65手目▲5二桂成(第1図)に対する藤井の封じ手△同王を挙げた。

 藤井は自身2番目の長考、2時間24分を費やしたが「封じ手で間違えた。(ほぼ2択の)△同銀も考えて、成算を持てなかった」。△同王から飛車角交換の後、73手目▲3一角を軽視したと振り返っていた。

 谷川は感想戦での両者のやりとりを思い出す。「▲5二桂成以降17手目の局面から延々感想戦をした。30分以上ずっとやりました」。羽生は構想と読み筋の確かさを示すため△同王はもちろん、△同銀でも五分以上の形勢と証明したい。ところが△同銀に対する藤井の応手はいずれも厳しかった。思わしい変化がない時に羽生が連発する「そっかー」を繰り返した。

 「将棋は羽生九段が勝ったが、感想戦は藤井王将が勝ちました。感想戦での藤井王将の手の見え方、切れ味は素晴らしかった」。負けてなお強しと印象づけられた一方、「7番勝負で2勝すれば責任を果たせたと思えるはず。もう余計なことを考えずに臨めます」。その棋士心理は、羽生の背中を押すとの見立てだった。 (構成・筒崎 嘉一)

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