【高校野球】古豪・桐蔭が33年ぶり和歌山大会決勝進出 研究通りの狙い球と機動力で和歌山東撃破

[ 2022年7月27日 15:59 ]

第104回全国高校野球選手権和歌山大会・準決勝   桐蔭10―0和歌山東(5回コールド) ( 2022年7月27日    紀三井寺公園野球場 )

<桐蔭-和歌山東>桐蔭1回裏2死一、二塁、有本がこの回2本目の長打を放つ(27日、紀三井寺公園野球場)
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 1回裏9点の猛攻に、桐蔭の主将・有本健亮(3年)は「こんなこと、練習試合でもありません」と喜び、驚いていた。打者13人攻撃。3番打者の有本自身、先制三塁打に9点目をたたき出す二塁打を放っていた。

 「VTRを見て研究していました。左右どちらの投手もほとんど外角ばかりだった。内角球はもう捨てていいから、踏み込んでいこうと話し合っていました」

 24日、先にベスト4進出を決めていた桐蔭は25日、和歌山東の準々決勝をテレビで観戦。ビデオでも研究していた。

 左腕・田村拓翔(3年)、右やや横手の麻田一誠(3年)の外角中心の配球を読み切り、積極的に打って出た。

 さらに先発の田村のけん制球のクセも読み切っていた。2番打者の谷山洸陽(3年)は「VTRを見て、けん制のクセとか分かっていました。これは走れると思っていました。足を使えたのが大きかった」と話した。

 1回裏先頭の西哲希(3年)が初球の外角スライダーを右前打。続く谷山洸陽(3年)との初球ヒットエンドランは左飛に終わったが、有本の打席で二盗を決めた。

 初回は投手の高野東我(とわ=3年)まで二盗を決めた。足で揺さぶって、相手2投手の乱れを呼んだ。1回裏だけで4四球、6長短打を集中したのだった。

 2回裏にも原田忠武(3年)の適時打で10点目。5回コールドで試合を終わらせてしまった。

 「僕はノーヒットでしたけど」と捕手・西尾岳人(3年)は自分の貢献を口にする。1回表1死一塁、相手の二盗を見事に刺したのだ。「相手の盗塁を封じて、こっちは走れた。あれで流れがきたんだと思う」。強肩のうわさが広まっているのか、今大会4試合で相手が盗塁が仕掛けてきたのは、これがわずか2度目だった。

 リード面も「逃げたら逆にやられる。強気で攻めていった」と、右腕・高野から左腕・寺田祐太(3年)につなぐいつもリレーで完封して見せた。

 今春の選抜出場校だった和歌山東相手の大勝だった。有本は言う。「個々の力量を比べたら、相手が上だと思う。でも、恐れたり、ひるんだりすることなく、向かっていった。全員で戦えば、こんな力になるんだと分かった」

 旧制・和歌山中(和中)の流れをひく伝統校。大先輩で、阪急、近鉄などで監督を務めた西本幸雄氏(故人)はよく「団体の力」を強調。たとえに、さかなへんに弱いと書く鰯(いわし)を持ち出していた。「いわしも大群となると力が出る。みんなが心底から力を合わせることによって、何かが可能になるんや」。これもまた伝統の力だと言えるかもしれない。

 夏の決勝進出は1989(平成元)年以来、実に33年ぶり、20度目だ。自身が生まれた年以来の決勝に、矢野健太郎監督(32)は「そんなに久しぶりなんですか」と驚いた。

 その89年、延長13回、1―2で敗れた相手が智弁和歌山だった。因縁の相手と再戦となる。有本らの世代は高校入学後、智弁和歌山と対戦するのは初めてという。「次も今日と同じです。向かっていくだけです」

 チームの目標は「甲子園で勝つこと」と定めていた。矢野監督は「甲子園で勝つためには智弁和歌山、市和歌山、和歌山東ら甲子園出場校に勝たなくてはいけません。そのためにやってきたんです」と話す。「秋も春も結果は出ていませんでしたが、コツコツ、コツコツ練習してきたことがこの夏につながっているんだと思います」

 29日の決勝に勝てば、21世紀枠で出場した2015年春の選抜以来7年ぶり、夏に限れば、1986年以来、36年ぶりの甲子園が待つ。 (内田 雅也)

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