巨人・山口俊 天敵は鈴木だけ? 被弾減らし悲願の初タイトル獲得へ

[ 2019年7月5日 09:00 ]

<巨・ロ>鈴木に右翼へ同点ソロアーチを浴びる山口(撮影・大塚 徹)
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 【宮入徹の記録の風景】 巨人の首位快走を支えているのが先発投手の山口だ。今季14試合に登板し、8勝2敗(勝率・800)、防御率1・99。4日現在、勝利、防御率、勝率の3部門でリーグ1位(勝利、勝率は1位タイ)に立っている。ここまで許した本塁打はわずか3本。両リーグ規定投球回以上の投手では最少で昨年の18本(リーグワースト3位)から大幅に減少している。打たれた打者は4月16日、5月5日広島戦でいずれも鈴木、6月8日ロッテ戦で鈴木。つまり今季鈴木姓以外の打者には浴びていないことになる。

 9イニング換算の被本塁打率にすると山口は0・30で両リーグ規定投球回以上の18人中で最も低い。規定投球回以上の投手で被本塁打率が0・30以下なら16年西(オリックス=0・22)以来。巨人では66年堀内恒夫(0・25)以来53年ぶりになる。被本塁打を打たれた状況も無走者2本、一塁1本で得点圏と3ラン、満塁は0。被本塁打から崩れるパターンは今季の山口には当てはまらない。

 もうひとつ、山口の特徴は初球打ちの被打率が低いこと。初球が打球となったケースでは35打数6安打、被打率・171でリーグ1位。セでは次いで低い菅野(巨人)の・258を抑え唯一1割台をキープしている。普通、初球打ちは打者有利になるが、今季の山口は別。巨人の投手で初球被打率が・171以下は65シーズンさかのぼっても67年菅原勝矢(・169)、15年マイコラス(・162)の2人しかいない。初球打ちの低い被打率は、投球数を減らせるメリットにもつながるだろう。

 山口は06年に横浜でデビューして以来14シーズン目を迎えているが、これまでタイトルとは縁が無い。充実したマウンドが続く山口にとって、今季は大きなチャンスといえる。もっとも、巨人の投手3冠タイトル(勝利、防御率、勝率)の顔ぶれを見ると、ある傾向が読み取れる。それは生え抜き投手の優位だ。それぞれのタイトルの延べ人数を生え抜き、移籍組に分けると勝利=生え抜き29人、移籍組4人、防御率=生え抜き24人、移籍組3人、勝率=生え抜き32人、移籍組5人と生え抜き投手が圧倒的に多い。また、各部門の最後の移籍組獲得者は、勝利=08年グライシンガー(前所属ヤクルト)、防御率=65年金田正一(前所属国鉄)、勝率=12年杉内俊哉(前所属ソフトバンク)となる。もしも最優秀防御率を山口が手にすれば、金田以来54年ぶりの快挙になる。

 ※江川卓は前所属の阪神で公式戦未登板のため生え抜きにカウントした。

 投手3冠に話を広げると、過去に獲得した投手はプロ野球全体で15年大谷翔平(日本ハム)まで22人、26度。この中でプロ入り球団以外で獲得したのは08年岩隈久志(楽天)のみ。それも04年限りで前所属の近鉄が消滅したことによる移籍措置のため。山口のようにFA移籍投手が3冠を取れば史上初めてだ。

 ただ、与四死球の多さは気がかり。今季の与四球はリーグワーストタイの36。与死球10はリーグワーストだ。現在防御率は2位の今永(DeNA=2・27)と0・28差あり勝利、勝率に比べ開きがある。過去、シーズン与四球がリーグワーストで最優秀防御率投手になったのは60年小野正一(大毎)、66年堀内恒夫(巨人)、90年野茂英雄(近鉄)の3人だけ。さらに与死球も最多で獲得した投手は皆無だ。課題の制球力を修正し、自身初のタイトル奪取を目指したい。(敬称略)

 ◇宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。

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2019年7月5日のニュース