×

旅・グルメ・健康

【さくらいよしえ きょうもセンベロ】ウルトラの楽宴

[ 2016年3月11日 05:30 ]

飲み放題の看板の先に「沼津港 海将」
Photo By スポニチ

 時は金なり!意地が汚い大酒飲みにとってここは“楽園”か?センベロライター、さくらいよしえが訪れたのは東京・上野の「沼津港 海将」。30分450円の飲み放題システムで、大好きな生ビールをがぶ飲み。カラータイマーが鳴っているのに長居し過ぎちゃった。

 午後6時18分、我々センベロ隊のゴングは鳴った。店内には独特の熱気。一人酒の中高年が酒コーナーに突進する。わしも負けじとジョッキを手にビアサーバーに向かう。1秒も無駄にするまい。いじましさが服を着た状態だ。昔、「君は酒に汚い」と男性に言われた。割り勘勝ちの人生、いつかバチが当たるとおびえている。

 しかし、当店は30分450円飲み放題の楽園だ。わしは最初の1杯を10分で空けた。同じく酒に意地汚い編集・K原はすでに2杯目を飲み終え3杯目の焼酎をじゃぶじゃぶ注いでいる。「ウルトラマンのカラータイマーみたいなシステム」(30分後は5分ごとに75円加算)と、はしゃぎ、飲むほどにパワーチャージしている。

 ちなみにもう一つの売りは沼津直送の海鮮だ。どれぐらい“直”かというと、ちょっとイケメンのオーナーの実家(沼津港の卸)からの直。透明感あふれる生シラスにマグロ、桜エビ、初めて食べる深海魚アブラボウズまで超絶フレッシュだ。

 オーナーは、「兄が実家を継ぎ、自分も違う形で沼津を発信したかった」という漁港サラブレッド。 

 そんな話をしながらもわしは酒のお代わりに全力集中していた。6杯目のビールを飲む頃、ふとうす~い梅酒割りをすする画伯・河井の視線が気になった。彼は実は下戸。毎度氷のように冷たい目で我々酔っ払いを見てるのだ。

 オーナーに過去最高に飲んだ猛者を聞くと、30分で生ビール8杯飲む常連が居たそうだがパタリと来なくなったという。「体、壊しちゃったのかも」「そりゃあ、やり過ぎですな!」。上には上がいるとホッとした心持ちで、「オーナーはお酒好きなんですね」と感謝の意を込め言うと、「いえ、ほぼ飲めません」。

 画伯・河井が同朋を得たようにうれしそうに笑った。 

 「でも」。画伯が言った。「ここはエンジョイできます。飲めないことも(セルフだから)バレないし」

 ハッとした。いつも皮肉な顔で我々の酔態を眺めてるくせに、内心は引け目に思っていた、のか。

 「いずれにせよ魚好き酒好きには最高の店です!」と優等生的にわしが丸く収めると、オーナーは「でも僕、魚も苦手で。子供の頃からおかずは一人だけ肉でした」と笑顔で衝撃の告白をした。

 楽園に置き去りになった泥酔ウルトラマン1号、2号は気づけば2時間滞在。2人で20杯超痛飲。もう宇宙に帰れなかった。(さくらい よしえ)

 ◆沼津港 海将 上野1号店 オープンは13年7月。飲み放題の酒類は、生ビール、本格焼酎、日本酒、梅酒など100種類以上。最初の30分は450円。あとは5分ごとに75円加算。グラスは1個ずつ使用で交換制。料理は1人2品のオーダーがルールだ。会員になると“ブラックカード”がもらえ、数々の特典も。オーナーの佐藤好是(こうじ)さん(33)の実家は、沼津の水産会社「佐政水産」。店で提供される生シラス、桜エビなどの魚介類はそこから運ばれる。営業は午前11時半から午後10時半。年中無休。(電)03(5817)8246。東京都台東区上野6の8の4。

 ◆さくらい よしえ 1973年(昭48)大阪生まれ。日大芸術学部卒。著書は「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)、「今夜も孤独じゃないグルメ」(交通新聞社)「にんげんラブラブ交叉点」(同)など。

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る