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【絶対!健康 若返る旅】伊豆に“桑”わる活気 福島から“復興の苗”取り寄せ商品化

[ 2019年5月31日 12:00 ]

桑畑で桑の生育状況をチェック。収穫時には高さ2メートルになるという
Photo By スポニチ

 熟年記者が旅をしながら健康を目指す「絶対!健康若返る旅」。今回は健康ブームに乗って注目されている桑を栽培、葉を商品化している静岡県は伊豆・松崎町を訪ねた。かつて養蚕業が盛んだった同町が町おこしとして東日本大震災の被災地から苗を取り寄せて始めたもの。桑にはルチン、ギャバなど体にいい5つの成分が入っているそうで、温泉となまこ壁の町を活気づけている。 

 「毎朝、桑葉茶(桑パウダー)をお湯で溶かして飲み始めて血糖値が下がったし、便通も良くなった」。そんな話を友人から聞いて出掛けた松崎町。目指すは伊豆急下田駅からバスで約50分、企業組合松崎桑葉ファームが経営する桑葉茶の直売店「くわや」だ。

 壁の継ぎ目が海のなまこのように盛り上がることからその名が付いたというなまこ壁が続く那賀川沿いにあり、店内には袋入りやスティックタイプの桑葉茶はもちろん、うどん、そば、かりんとう、どら焼きなど、桑の葉を使った商品がズラリ。サービスで出される水で溶かした桑葉茶を飲んでみると、クセがなく爽やかな飲み口。「目指せ健康長寿日本一」と書かれた卓上のぼりが、味わいを後押しする。

 くわやがオープンしたのは2014年(平26)9月。「東農大教授から福島県の農家から食用の桑を取り寄せて育て、“復興の桑”として葉を製品化しないかと話があった。松崎は明治時代、養蚕が盛んだった地域。放射線量も基準値以下だったし、耕作放棄地解消や町民の雇用創出、健康増進にもなると思い、始めた」(同ファーム代表理事・斎藤省一さん)という。

 斎藤さんが特に注目したのは健康増進。桑には(1)糖分吸収をブロックするイミノ糖類(2)血管を強化するルチン(3)血圧や中性脂肪を抑えるギャバ(4)カリウムや鉄分を含むミネラル(5)整腸作用がある食物繊維――が含まれるとされ、「町の高齢者に1年間、モニター使用してもらったところ、7割の人が体調が改善した」(斎藤さん)という。

 現在、畑は2000平方メートルから1万5000平方メートルに、組合員も27人から46人に増大。近くに工場も建て、六次産業化も果たした。さらに、くわや隣の食事・土産処(どころ)「であい村 蔵ら」では、かつてのまゆ形もなか「まゆの里」を復活させた「まゆこ」に桑葉のあんを使用して桜葉、粒のあんとともに3個300円で提供、下田市の菓子店「ロロ黒船」では桑葉を練り込んだ伊豆クリーム大福(200円)を販売するなど、外部にも広がりを見せている。

 くわやから車で約5分の畑に向かうと、7月の収穫期には高さ2メートルほどになるという桑の葉が陽光に映えて輝く。「蚕の作るマユの糸は1本1300メートルになるというけど、我々はその動力源となる桑の葉を食べるんだから体にいいはずだよ」と斎藤さん。先ほど飲んだ桑葉茶をもう一杯、飲みたくなった。

 《再脚光浴びる「室岩洞」》桑栽培、まゆ形もなかに続いて人力車も7年ぶりに復活した松崎町だが、伊豆半島ジオパークが世界ジオパークに認定されたことで、再び脚光を浴びているのが荒々しい岩肌がおりなす海岸線。その一画にある「室岩洞」は、江戸城の石垣などに使用されたという石(伊豆石)切り場跡で、手軽に見学できる。洞内の広さは約2000平方メートル。内部を巡る遊歩道は約180メートルだが、それなりに入り組んでいて迷路のよう。

 それでも1954年(昭29)まで採石が行われていたこともあって、石を運び出した跡や手掘りのノミの跡、地下水のたまった石室跡などがほとんど当時のまま残っており、掲示板の説明を読みながら回るのも楽しい。裏側の石材を海岸へ滑り下ろしていた場所に出ると、眼下に駿河湾が広がり、抜群の眺望。晴れた日には富士山も見えるそうで、当時の人々には癒やしの場になったに違いない。松崎ターミナルからバスで約6分。

 ▽行かれる方へ 伊豆急下田駅からはバスで約50分、伊豆箱根鉄道修善寺駅からはバスで約1時間45分。車は東名道沼津ICか、新東名道長泉沼津ICから伊豆中央道などを経由して約1時間35分。問い合わせはくわや=(電)0558(43)1670、松崎町観光協会=(電)同(42)0745。  

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