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【だから元気】84歳・三浦雄一郎さん 攻めのヘビーウオーク

[ 2017年9月15日 12:00 ]

約20キロのザックを背負っての「ヘビーウオーク」で体を鍛える三浦雄一郎さん
Photo By スポニチ

 世界的スキーヤー、冒険家として知られる三浦雄一郎さん(84)は傘寿を超えても現役バリバリだ。史上最高齢となる80歳でのエベレスト登頂以降も、挑戦意欲は衰えていない。そんなバイタリティーを支えているのが「攻めの健康法」。日々の負荷ウオーキングで鍛え、新たな目標に突き進んでいる。

 「ヘビーウオーク」と名付けてますが、体に負荷をかけて歩くのが僕のトレーニング。今は片足2キロの重りが入った靴を履き、20キロの重さのザックを背負う。距離よりも時間で、ほぼ1時間前後。近くに明治神宮(東京)があるので、ひと回りすると、ちょうど1時間くらいなんです。

 始めたのは「目標」のためでした。53歳で世界七大陸最高峰のスキー滑降を制覇して「終わったから、もういいだろう」と、その後はトレーニングなどを全部やめて暴飲暴食、運動不足の生活。おかげでメタボになった。60代半ばのころには身長1メートル64なのに、体重は90キロ近く。全峰制覇した時は78キロぐらいでしたから10キロ増。当然、血圧も190だ、糖尿病だと…。

 ちょうどそのころ、僕の父親、三浦敬三(2006年、101歳で死去)が99歳になったらモンブラン氷河をスキーで滑るという目標に向かって挑戦し続けていた。負けていられないと思いました。オヤジがモンブランなら、僕はエベレストに登ってやろうと。でも、すぐには登れる状態にないですから、5年後、70歳で登ろうと計画を立てました。まずはメタボを治す、また、足腰も鍛えなきゃいけなかった。

 健康法には2種類あると思っています。一つは守りの健康法。これは軽いウオーキングや、ラジオ体操、バランスのいい食事などです。健康生活の基本ですけど、これではメタボはなかなか解消できない。じゃあ、攻める健康法をということで、ウオーキングの際に足に重り、そしてザックを背負いました。

 始めて半年、試しに札幌の藻岩山に登ってみました。標高531メートルの、幼稚園児が遠足で登るような山です。でも、途中まで登ったら苦しくなって、こりゃ無理だと頂上に行くのを諦めた。それでもヘビーウオークを続けていくうちに体重は落ち、メタボの数値も改善されていきました。足の重りは1年目は1キロずつ。2年目は3キロ、3年たって5キロ、最終的には片足10キロずつ重りをつけ、背中には30キロ。これで1時間歩けるようになれば、エベレストに登れる足腰、体力の基礎ができる。とうとう結果として、70歳でエベレストに登れたわけです。

 その後、75歳で2度目のエベレスト登頂。そしたら80歳でも登れるかやってみようと思いました。その間、心臓の不整脈で手術を受けたり、スキーで骨盤骨折の大ケガを負ったりしましたが、乗り越えられたのは、攻めの健康法で40代の体力をキープできていたからかもしれません。

 やはり、いくつになっても目標を持つことが大切。僕のテーマといっては大げさですが、年齢の限界を超えながら人類はこんなこともできる、人類の新記録をつくりたいというのがあります。とりあえず来年の秋にはチョーオユー(ヒマラヤ山脈、8201メートル、世界第6位)に登って、スキーで滑り降りようという計画を持っています。これも人類の記録になる。80歳でのエベレスト登頂は世界最高齢としてギネス認定されましたが、もう一つ、80歳を超えて8000メートル以上に行った人はいないということで、それもギネスに認定されました。来年、その記録を自分で更新したいと思っています。壮大な目標というか、ただ、面白いと思うからやっているだけなんですけどね(笑い)。

 《筋肉量は20代から30代後半》84歳の三浦氏だが、大学の本格的な測定器で計測すると「筋肉量は20代から30代後半、骨密度は20代の平均より強いんです」と言う。ただ、トレーニングは負荷をかければいいというものではなく「毎日やるとかえって弱くなる。疲れがたまって膝を痛めたり、重い物を背負ったら2日以上休まないと回復しない。やり過ぎても逆に体を壊してしまう。だから運動、休養、栄養の3本柱」と強調。同年代へのアドバイスとしては「年を取ると家に引っ込みがちになるが、できれば旅をしてみる。温泉でもハイキングでもいい。旅行が一番、アンチエイジングにはいいんじゃないかな」。さらに「年を取って、俺はもうダメだとか、歩けなくなったとかいう人もいるが、自分で諦めてるんですよね。諦めないで、自分のやりたいことをやるということが大事」と語った。

 ◆三浦 雄一郎(みうら・ゆういちろう)1932年(昭7)10月12日、青森市生まれの84歳。北海道大学獣医学部卒。85年に世界七大陸最高峰のスキー滑降を達成。70歳の2003年にエベレスト世界最高齢(当時)登頂に成功。75歳の08年、80歳の13年にもエベレスト登頂を成し遂げた。次男の豪太(48)はフリースタイルスキー男子モーグルの元日本代表選手で現在はプロスキーヤー、博士(医学)。

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