羽生九段 藤井王将との夢対戦へ前進、渡辺名人を88手で撃破し開幕4連勝 

[ 2022年10月27日 05:04 ]

渡辺名人(左)を破った羽生九段(撮影・尾崎 有希)
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 将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグは26日、東京都渋谷区の将棋会館で渡辺明名人(38)=棋王との2冠=―羽生善治九段(52)の一局を行い、千日手指し直しの末、後手の羽生が88手で快勝した。開幕4連勝を飾った羽生は暫定首位をがっちりキープ。第65期以来、7期ぶりの7番勝負出場へ大きく前進した。

 リーグ最年長の52歳・羽生が元気だ。いや元気すぎる。千日手指し直し局は88手の短手数で名人3連覇中の難敵を打ち破った。近寄る者に指一本たりとも触れさせない破竹のリーグ4連勝。鮮烈の極みだ。

 午前10時から始まった先手番は「予定と違う局面になった。作戦が失敗したのでしょうがない」と、あっさり千日手。一般的には不利と言われる後手に回った仕切り直し対決は渡辺を横歩取りに誘い、自らの飛車を四段目に構えた。

 ここでひねり飛車?

 「この間のリーグ(14日=対近藤誠也七段)でも同じ将棋を指したから、もう一回やってみようと。千日手は想定していなかったので、(採用は)まあその時の気分で。はい」

 さらりと背景を明かす。気分で選んだ作戦でも、37年超の棋士生活で積み上げた脳内データベースを自由自在に活用し、じわじわと渡辺の右辺に細かいジャブを送る。先に角成りを実現させ、ひねった飛車と連動。70手目△3四飛、72手目3七歩成の組み合わせで「攻めがつながる形になってちょっと良くなった」と手応えをつかんだ。小刻みにうなずきながら寄せ筋を何度も確認。84手目△4五桂と跳ねて「遊んでいた駒が使えるようになった」のが勝利のポイントだった。

 不振にあえいだ昨年度。14勝24敗という信じられない成績で、順位戦はA級から陥落した。巻き返しを期した新年度は凝り固まりかけた過去の常識にいったんメスを入れ、違和感のある新傾向を柔軟に受け入れ始めた。「まだまだ全体像をつかむのは難しい」とぼやきながらも今年度はこの日で15勝8敗。リーグ残留を決めただけでなく、藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=挑戦の可能性も膨らんできた。

 「次の対戦もすぐある(31日=対永瀬王座)。いい将棋を指せたらなと思ってます」リーグは残り2局。世紀の対決実現が羽生の視野にある。

《渡辺3敗…完全消滅》前王将の渡辺は3敗となり、7番勝負挑戦の可能性が完全消滅。指し直し局は得意の先手番となりながらも、中盤で桂損となった傷が最後まで響いた。「(羽生の)飛車をもっといじめる予定だったが、(62手目)△4五歩と突かれ、飛車を楽にしてしまった。最後は何をやっているか分からない展開」。挑戦の目は消えたが、残る2局でリーグ残留を目指す。

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