「高津ノート」独占入手 「野村ノート」が形を変えて…燕の元守護神が守り続ける“伝統”

[ 2021年10月27日 05:30 ]

ヤクルト6年ぶりセ・リーグ優勝 ( 2021年10月26日 )

ヤクルト・高津監督の直筆で書かれた「高津ノート」
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 就任2年目でリーグ優勝に導いたヤクルト・高津臣吾監督(52)。2年連続最下位のチームを、いかにして頂点に導いたのか。本紙は指揮官直筆の「高津ノート」の一部を独占入手。「野村ノート」を記した恩師である野村克也元監督から薫陶を受けた指揮官のノートを基に、今季のチームマネジメントを振り返る。(企画・構成 川手 達矢、青森 正宣)

 【3・28 開幕3連敗】3戦計21失点で開幕3連敗。2月の春季キャンプは他球団より休養日の間隔が短い「3勤1休」だった。猛練習も必要だが、選手層も考え故障回避を重視。「ぬるい、甘いと言う人もいたかもしれないが、そこだけじゃない。体調を整えてスタートを切りたかった」。昨季10勝13敗1分けの阪神に今年も6月まで1勝8敗2分けも、先を見据えていた。

 【4・4 コロナの試練】試練に襲われた。3月31日、西田が新型コロナウイルス陽性判定。青木、内川、川端が濃厚接触者となり離脱。同日のDeNA戦は前日からスタメン6選手変更。「その程度で終わって逆に良かった。この時期で良かったのかな」と前向きに振り返った。

 【5・27 近藤痛恨離脱】近藤が右肩の肉離れで5月27日に出場選手登録抹消。45試合を終えた同26日時点で、約半数の22試合に登板し0勝1敗11ホールド、防御率0.96だった。試合後の会見でも「すごく反省しています」と謝罪。より一層「勝利」と「管理」のバランスを追求した采配が始まった。

 【6・13 再生工場稼働】中継ぎ陣の疲労を感じ取り、整備に着手。配置転換していた抑えの石山を2軍再調整、8回を清水、抑えをマクガフに託した。終盤には19年オフに楽天を戦力外となった今野を方程式に抜てき。先発で不本意だったスアレス、田口を救援に回した。昨年の救援防御率4.33から1点以上も改善。柔軟な発想は「野村再生工場」ならぬ「高津再生工場」と称された。

 【6・18 村上大舞台へ】昨季は主に一塁で起用した村上。春季キャンプ前に三塁挑戦の意向があることを伝え聞き、三塁手で鍛え上げることを決意した。課題の守備が向上し、侍ジャパン代表選考会議では、同首脳陣から「守備が向上している」と評価され最年少で代表入り。三塁で全5試合に先発出場した。

 【7・14 8・11 五輪を励みに】前半戦最終戦だった7月14日の巨人戦(東京ドーム)前、ブルペンで関係者全員を集め“五輪壮行会”開催。3選手が再合流した8月11日のミーティングでは健闘を称え、ポケットマネーで高級シャンパンをプレゼント。

 【9・7 「絶対、大丈夫」】同日から阪神3連戦(甲子園)。直近6試合で1勝4敗1分けと停滞し、優勝戦線から離脱しかけた流れを変えるため、初戦の試合前にミーティングを開催。野村元監督の言葉も用いながら「絶対、大丈夫」「何かあったら、僕が出て行く」と熱っぽく説いた。同3連戦を勝ち越し、快進撃が幕開け。「伝説のミーティング」となり「絶対、大丈夫」はグッズ化もされた。

 【9・23 奥川で“合図”】10連戦初戦だった9月17日の巨人戦(東京ドーム)で、奥川を中9日で先発起用。中10日以上を保った制限解除は、チームへの「ここからが勝負」という合図でもあった。強化段階の右腕の体調を管理する球団、トレーナーと意見交換した上での英断。奥川も7回5安打1失点で応えた。

 【9・26 “勝負手”続々】10連戦10戦目だった同日の中日戦(神宮)で、石川を今季チームで初めて中5日投入。ナインへのムチ入れ第2弾だった。左腕は6回5安打無失点と好投し、16―0の圧勝。「ここからが優勝を左右する戦いの始まり」の思いを全員と共有した。5勝1敗だった10月5日からの巨人、阪神との6連戦では清水、マクガフの今季初の4日連続登板も解禁。同8日にマジック11がともった。勝負の6連戦直前には、清水とマクガフを2試合温存し休養を与える周到さ。規定投球回到達投手なし。1年を見越したマネジメント力で、6年ぶりの歓喜へ導いた。

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