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引退・斎藤佑樹の“長所と短所”、アマ時代から長く取材 スポーツライター・石田雄太氏が見た素顔

[ 2021年10月2日 06:10 ]

日本ハム・斎藤佑樹投手 今季限り現役引退

今季限りでの引退を発表した斎藤佑樹投手
Photo By スポニチ

 今季限りでの引退を表明した、日本ハムの斎藤佑樹について、アマ時代から長く取材してきたスポーツライターの石田雄太氏(56)が寄稿。グラウンド上では見えない「人間・斎藤佑樹」の素顔をつづった。

 斎藤佑樹は気が短い。

 いつも穏やかで、必要以上に周りに対して気を配り、如才なく立ち回る彼にそういうイメージを抱いている人は多くないだろう。しかし彼は気が短く、せっかちで、気ぜわしい。それが野球人としては彼の長所でもあり、短所にもなってしまっていた。

 いいところは先を読む能力にたけているところだ。せっかちな斎藤は人の話を結末を想像しながら聞いている。頭の回転が速く、次のことをイメージするのが得意で、だから斎藤はバッターの狙い球と違う球を投げたり、意識しているところからほんの少し外したコースへ平然と投げていた。バッターが手を出さないとみれば、ポンとど真ん中へ投げることも珍しくない。夏の甲子園で勝ち、神宮で日本一に輝いた時の斎藤は己の“感覚”に絶対的な自信を持ち、「24時間、年中無休でイメージを描いています」と話していた。

 逆によくないところは、いろんな人の話を聞いていろんなトレーニングに取り組み、結果として遠回りをしてしまったことだった。新しい試みをポジティブに捉える斎藤には、何でも“勉強”しようという好奇心の塊のようなところがある。このトレーニングがいいと聞けばすぐにやってみるし、この治療法がいいとなれば積極的に取り入れる。ただ長続きしないものも多かった。気ぜわしいせいで性急に結果を求めてしまうからだ。プロに入って右肩や右肘を痛め、ケガと闘う日々を過ごすことになったのは、そんな彼の好奇心が裏目に出たところもあったように思う。

 斎藤は「感覚には右脳の、勉強には左脳の働きが必要」だと話していた。アマチュア時代の斎藤は右脳がはじき出す感覚を信じてボールを投げてきた。プロに入って壁にぶつかった時、今度はいろんな勉強を重ねてノートを取り、体の組成や動画によるフォームの分析などに興味を持って、左脳で考えながら野球に取り組んできた。右脳の感覚と左脳のデータを組み合わせて、ようやく理想のピッチングができる域に達した時、悲しいかな斎藤の右肩は悲鳴を上げた。だからこの数年はもどかしかったし、悔しかったに違いない。

 結果が伴わない斎藤に厳しい声は絶えなかった。それでも彼はいつでも明るく、前向きだった。気が短くてせっかちだからこそ、次から次へ新たなテーマが浮かんできたのだ。斎藤の野球への興味は尽きることがない。とてつもなく高い山もどん底の谷も味わった斎藤は野球人として、次にどんなステージを目指すのだろう。

 ◇石田 雄太(いしだ・ゆうた)1964年(昭39)生まれ、愛知県出身の56歳。青学大を卒業後、NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者としての近著は「イチロー・インタビューズ激闘の軌跡」「大谷翔平・野球翔年I」「平成野球30年の30人」など。

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