【中畑清 キヨシスタイル】金足農・輝星に見た高校野球の原点 球数制限の是非は「生きざまの問題」

[ 2018年8月21日 11:30 ]

第100回全国高校野球選手権大会準決勝   金足農2―1日大三 ( 2018年8月20日    甲子園 )

4回2死一・三塁、高木を三振に仕留める吉田(撮影・高橋 雄二)
Photo By スポニチ

 凄い高校球児が出てきてくれたな。金足農の吉田輝星。球数制限導入の是非が問われている今、これが高校野球の原点という強烈なメッセージを送ってくれているような気がする。

 準決勝の日大三戦も134球で完投。秋田大会から10試合を全て一人で投げ切ってきた。無駄のない投球フォーム。状況に応じてクイックで投げるなど間合いを変えピンチではけん制を何球も続けて打者の打ち気をそらす。しかも自在にコントロールできる。こんな高校生がいるのかと思わせる投球術だ。

 投げるだけじゃない。素早いバント処理。打者としてバントを決めれば一塁へ全力疾走。準決勝では8回のピンチを1点でしのいだ直後の9回、先頭打者として打席に入った。その裏の投球を考えたら無理しなくていいのに、ファウルで粘って最後はフルスイングの三振。全て全力でプレーしているのだ。

 9回、仲間のミスから招いたピンチを切り抜けての校歌斉唱。上体を反らす応援団スタイルでチームメートと声を張り上げた。監督さん、いい教育してるわ。

 一方、決勝進出を阻まれた日大三は全員涙を流している。全力でぶつかり合った両者の対照的な光景。テレビの前の私まで感極まったよ。

 さて、球数制限である。是非の判断は人生のゴールをどこに置くかで変わってくる。

 プロ野球や大リーグで活躍するのをゴールとするなら、故障のリスクを減らす球数制限や連投回避の改革は必要かもしれない。

 でも、人生は野球をやめてからの方が長い。仲間と汗を流し、やっとたどり着いた甲子園。その聖地で頂点を目指せるなんて人生の中で一番大切な時間になるかもしれない。この何週間かで経験し、学んだことが実社会に出たとき、役に立たないわけがない。野球をやめたずっと後にゴールを置くなら、制約なく甲子園で完全燃焼させてあげた方がいい。要は生きざまの問題だ。

 輝星は21日の決勝戦も一人で投げ切るんだろうな。勝ち負けは残酷についてくるけど、持てる力を出し切ってくれればいい。素晴らしい野球人が出てきてくれたことに感謝してるから。それで十分だ。 (本紙評論家・中畑 清)

続きを表示

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

2018年8月21日のニュース