佐藤満氏が語るレスリング初戦のポイント 文田、グラウンドで守れる「安定感」鍵に

[ 2021年8月1日 05:30 ]

レスリング男子グレコローマン60キロ級の文田健一郎
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 メダル量産が期待されるレスリングは1日から7日間、各階級のトップがしのぎを削る。初日には男子グレコローマンスタイル60キロ級で金メダル最有力候補の文田健一郎(25=ミキハウス)が登場する。88年ソウル五輪フリースタイル52キロ級金メダリストの佐藤満氏(専大教授、元日本男子強化委員長)が、勝利のポイントを挙げた。

 文田は6月に出場予定だったポーランドの国際大会がワクチン接種の副反応の影響で取りやめとなり、国際大会出場は20年2月が最後で実戦感覚の不安は残る。ただ、本人もその懸念を払しょくする練習に取り組んでいるはずだ。元々実力と安定感は文田が一番上。初戦で自分のペースをつかめば波に乗れる。海外の選手は試合を経験している分、有利かもしれないが、その経験値で文田との実力差を埋められるとは言い切れない。

 攻撃が注目される文田だが、19年世界王者の第1シードとしてマークされる中ではグラウンド(寝技)の守りが鍵になる。おそらく文田と対戦する選手は投げを警戒し、勝つためにグラウンド勝負に持っていきたいだろう。五輪だと先にグラウンドで守れなかった時に、焦って点を返せないことがある。それぞれの選手が持つ得点パターンに対応し、確実に守れる安定感があれば負ける要素はないのではないか。

 もちろん、理想は彼の代名詞である反り投げで勝つこと。常に自分が前に出てプレッシャーをかけた上で、相手の出どころのタイミングが合えば攻め込めるかもしれない。世界で一番強い文田のスタンド(立ち技)で取りにいく戦いはしてほしいが、投げがかからない時に焦らない心の準備が必要だ。グラウンドの攻撃も当然対策されるが、今までの得点パターンを含めて次の連係技があれば取るチャンスは増えるはずだ。

 決勝は19年世界選手権決勝で下した第2シードのセルゲイ・エメリン(ロシア)か、第3シードのトルコの若手選手ケレム・カマルのどちらかが上がってくる可能性が高い。エメリンは技が多彩で、得点を取る能力が高い。出だしが大事で、パーテールポジション(消極的な選手が寝技の防御から試合を再開する罰則)を先に取れる展開に持ち込まないといけない。チャンピオンを目指すには攻め続けないと何があるか分からない。ただ、文田はそういった戦い方ができる選手だ。

 17、19年と世界選手権を2度制している文田にとっても五輪は初めて。特別な舞台であることに間違いはないが、強気で自信を持って戦えばメンタルの部分は問題ないだろう。焦らず強引にいかず、勢いも忘れない。そうすれば日本グレコ勢では84年ロサンゼルス大会以来となる金メダルは堅い。同日の女子76キロ級の皆川博恵(クリナップ)もメダルのチャンスは十分ある。ともに確実にメダルを獲って、日本チームに勢いを付けてほしい。(88年ソウル五輪フリー52キロ級金メダリスト、元日本男子強化委員長、専大教授)

 ◇佐藤 満(さとう・みつる)1961年(昭36)12月21日生まれ、秋田県出身の59歳。秋田商入学後からレスリングを始め、3年時に高校3冠。85年に全日本選手権フリー52キロ級で初優勝し、88年ソウル五輪で金メダルを獲得。92年バルセロナは1回戦で肋軟骨を負傷しながら6位入賞。12年ロンドン五輪レスリング日本代表チームリーダー。現在は専大教授。日本公衆衛生学会、日本運動・スポーツ科学学会などにも所属。

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