12年ぶり珍事 「後手番」千田七段が「初手」反則負け リーグ開幕前から決まっていた手番失念

[ 2022年12月23日 05:06 ]

千田翔太七段
Photo By 共同

 将棋の名人戦挑戦権を争うA級順位戦につぐB級1組で、約12年ぶりの反則負けが起きた。東京・将棋会館で22日に行われた近藤誠也七段(26)と千田翔太七段(28)の対局。後手番に決まっていた千田が初手に飛先の歩を突いた。対局規定第8条「反則」条項の「先後誤り」に該当し、反則負けとなった。

 「今日の対局は先手番だと思い込んで準備をしていました。対局を成立させることができず申し訳ありません」。対局開始の午前10時に負けが決まった千田は記録上、一手も指すことなく負けを受け入れた。勝利した近藤に「申し訳ないです」と謝罪した。

 13人が総当たりで昇級2枠を争うB級1組は、実力者が潜むことから「鬼のすみか」の異名がある。この日はB級1組の4局などが将棋会館で指されていた。

 千田は、リーグ開幕前から決まっていた後手番を失念。加えて記録係が1人で2局を担当し、対局開始前に先手番を告知する言葉を把握しきれないまま指してしまった。

 「盤面に集中していて自分の名前がなかったことには気付きませんでした」。その後、記録係が対局立会人の土佐浩司八段(67)を呼び、土佐が対局規定を示して反則と確認した。

 日本将棋連盟によれば、先後間違えて1手負けになったのは2011年1月以来。本社主催・第61期王将戦1次予選の植山悦行七段と金沢孝史五段の対局で、後手金沢が初手に[後]3四歩を指した。
 千田は今年の「角換わり3三金型早繰り銀」などで2度、新手や新構想に対して贈られる升田幸三賞を受賞。ソフトを使った将棋研究の先駆者として知られる。藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖を含む5冠=にパソコンでの将棋の研究を指南した人物でもある。藤井は四段昇段前、千田の助言を受けパソコンを駆使し、難関の三段リーグ1期抜けを達成した。千田は対藤井戦で2勝4敗の結果を残している。

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2022年12月23日のニュース