W杯芸人・すがや、現地観戦の魅力とは 費用、家族、仕事…課題さまざまも「そこでしか見られない景色」

[ 2022年12月23日 08:00 ]

18年、ロシア大会でヘディングを決めた日本VSセネガルのスタジアムでのすがや(カカロニ菅谷直弘のまずやってみるブログから)
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 メッシ擁するアルゼンチン代表が激闘の末、36年ぶり3度目の優勝を果たしたサッカーのFIFAワールドカップ(W杯)カタール。大のサッカーファンとして知られ、「W杯芸人」の異名を持つお笑いコンビ「カカロニ」のすがやなおひろ(31)がスポニチの取材に対し、現地観戦の魅力について熱い思いを打ち明けた。

 すがやは18年ロシアW杯、6月24日に実施されたセネガル戦で、ゴール裏に外れたセネガルのシュートをスタンドでヘディング・クリアし話題に。上半身裸に「16強」と胸に書かれた姿が反響を呼び、動画は世界中に拡散された。これを機に「W杯芸人」として知られることとなり、豊富な知識量と話題性から、大会期間中はメディアに引っ張りだこの存在となった。

 カタール大会については、漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2022」で敗退したことを受けて、現地入りを決意。12日間滞在し、日本の1次リーグE組の3試合を含む9試合を現地で観戦した。

 現地観戦のための費用は、芸人の仕事の空き時間にフードデリバリーサービスの配達員バイトをしてコツコツ貯金した。移動費やチケット代、現地での宿泊・食事代など、10日間の総額は「ざっくり50万円くらい」だったという。「ロシアW杯のときは、約35万円くらいで行けたんです。ロシアのときはドミトリーに宿泊したけど、カタールではどれだけ安くても1泊1万円でした」と事情を語る。

 5月に20年に結婚した一般女性との間に第一子が誕生したばかりだったが、現地観戦への思いは揺るがなかった。「出会う前からW杯に行っていたし、『アメトーーク!』にW杯芸人として出していただいたのもあって、理解はしてもらえた」と振り返る。これほどまでに現地観戦にこだわる理由として、すがやは「一体感」をキーワードに上げた。「異国まで行くという熱量がみんな高いから、一体感が感じられる。選手と一緒に戦っているという感覚が、苦労した分、増していく。自分も日本代表と錯覚するような感覚になる。君が代を、遠い異国で聞いたときにそれを感じられる」と熱弁する。

 そんなすがやのW杯初観戦は、2014年に行われたブラジル大会だった。「一生に一度はW杯にいけたら…、という感覚だったんですけど、そう思ったときの次のW杯がブラジルだったんです。どうせ一生に一度なら、サッカーが一番盛り上がる国のW杯に行きたい!と思って決断しました」と8年前の初観戦を振り返り「一生に一度のつもりが、ハマってしまい毎回になった」と笑顔を見せた。

 費用や家庭、さらには仕事と、誰もが簡単に現地で観戦できるわけではない。仕事について、すがやはマネジャーに対し「1位はM-1、2位はW杯、3位がその他の仕事」と優先順位を予め伝え「W杯だけは行かせてください」と懇願したという。「僕みたいな人もいれば、4年前から会社に宣言している人も、この期間に合わせて転職活動をする人もいる。みんな、苦労して応援に来ているんです。ネットとかで『こいつら何の仕事してんだよ』って言われることもありますが、みんな苦労してきている」と、現地観戦サポーターの並々ならぬ思いを代弁する。

 続けて「なぜか苦労すればするほど、勝つ未来しか想像できなくなる」と、この苦労も魅力だという。「E組はマジで“いかつかった”ですけど、組み合わせ決定後に同組他国の試合を見るようにしていて。ドイツに関しては、意外と付け入るスキがありそうだなと思っていました。後付けみたいに言われるかもしれませんが…ドイツなら勝てるチャンスがあると、実は、トークライブなどでは予言していたんです」という。その予想が的中し、日本代表は、初戦で優勝4度を誇るドイツに2―1で逆転勝ちした。「勝った瞬間は、僕が日本代表を見てきた中では一番盛り上がりましたね。完全に過去一」と大興奮し「初めての経験だったのが、日本が逆転した瞬間から、日本コールがスタジアム全体に広がったんです。外国の方も、自然と日本のプレーに歓声が出だして。これは凄いなって思いました。みんなが声に出さずにはいられないという感じでした。この高揚は現地でしか見られない。みんなこの瞬間を見たくて、何試合も通っている」と高揚した。

 日本代表の進撃もあり、国内でも大きな盛り上がりを見せた今大会。現地中継や解説として、メディアですがやを見ない日はなかった。大ブレークを呼んだのは、やはり4年前のセネガル戦のヘディングクリアだったといい、「あれがあるから、W杯に行ったときに現地で仕事がある。W杯を見に来ている芸人、僕だけではないから。その中で仕事をもらえているのは、テレビで面白いを担ってくれている相方と、あのヘディングがあったから。名前はちょっと広がったかなと思います。全部、日本代表のおかげですが」と自らの強運と相方、そして日本代表に感謝した。

 続けて「また僕への注目は4年かけてしぼんでいきます。わかってるんですよ、もう」と自虐したが、かつてテレビでサッカーを語りたいと夢見ていたサッカー少年は、「アメトーーク!」に出演するという夢を一つかなえた。だが「サッカーの情報を話すことはできても、おもしろおかしくしゃべる領域にきていない」と向上心を口にし「理想は、くりぃむしちゅー・有田哲平さん。有田さんがYouTubeなどでプロレスを語る番組をやっていて、とにかく知識量と話術がおそろしいレベルで。有田さんがプロレスでやっていることを、サッカーでできるようになれたら」と目標を告白。「バイトをせずに、芸人としての収入でW杯に行けるようにすることと、家族で観戦に行くこと。いつか子供と観戦したいですね。外国人と交流する喜びや、国籍で人間性を想像してはいけないというのを知ってほしい」と芸人としての決意を新たにしていた。

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2022年12月23日のニュース