横浜「激戦区・神奈川」の看板を背負うプライド…ピンチに動じず、チャンスで焦らず

[ 2022年8月10日 04:00 ]

第104回全国高校野球選手権第4日・1回戦   横浜4ー2三重 ( 2022年8月9日    甲子園 )

<横浜・三重>8回、ベンチからナインに指示を送る横浜・村田監督(撮影・北條 貴史)
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 【秋村誠人の聖地誠論】神奈川を制す者は全国を制す――。かつてそんな格言があったのを知っているだろうか。夏の甲子園で神奈川県勢は70年に東海大相模、71年にも桐蔭学園と立て続けに優勝。さらに73年選抜でも横浜が初優勝を飾り、全国一の激戦区をそう表現する言葉が生まれた。

 その格言は、水島新司氏の人気野球漫画「ドカベン」にも出てくる。主人公・山田太郎の明訓高校のモデルは水島氏の出身地にある新潟明訓なのは有名だが、物語の舞台は神奈川だ。それはなぜなのか。激戦区で明訓のライバル校を多く描けるからではないか、と勝手に解釈している。そして72年に連載が始まった「ドカベン」も、格言が生まれるころ高校野球編へ入っていく。ちょうど横浜が、73年選抜を制したのと同時期だった。

 いつものように「激戦区・神奈川」の看板を背負い、甲子園でもピンチに動じず、チャンスで焦らない。初回。いきなり迎えた無死二塁のピンチで、投前の送りバントを処理した2年生左腕の杉山遥希がジャッグルしかけた。普通なら三塁は諦めて確実に一塁送球のところを、素早く握り直して三塁へ。間一髪アウトにした。二塁走者は見えていないのに的確な判断で慌てず、正確に。流れを失いかねない場面で、こんなプレーをできるのが横浜の強さだ。4得点はいずれも2死から。チャンスを逃さない勝負強さも伝統なのだろう。

 この夏。横浜は神奈川大会決勝で、宿命のライバル・東海大相模にサヨナラ勝ちして2年連続の甲子園を決めた。「東海大相模さんがいるから横浜は成長できる」。村田浩明監督はそう言って涙を流した。ライバルとしのぎを削って、成長してやってきた夢舞台。この日の勝利で横浜は春夏通算甲子園60勝だ。村田監督は「それは知らなかった」と言ったが、積み重ねた勝利数は激戦区を戦った証でもある。

 好投手・上山颯太(3年)擁する三重を打ち破った。熱い夏、神奈川を制した横浜はどこまで勝ち続けるか。今年1月に他界した水島氏も天国から見ているに違いない。(専門委員)

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2022年8月10日のニュース