【昭和の甲子園 真夏の伝説(5)】 史上初の延長18回再試合 徳島商・板東―魚津・村椿 感動投手戦
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甲子園の熱い夏が始まった――。第104回全国高校野球選手権が6日に開幕。幾多の名勝負が繰り広げられた聖地で、今年はどんなドラマが生まれるのだろうか。今回は「昭和の甲子園 真夏の伝説」と題して、今も語り継がれる伝説の試合を10回にわたってお届けする。
1958年(昭和33年)夏は第40回記念大会。史上初めて全国各都道府県の代表校にアメリカ施政下の沖縄代表を加えた47校が出場した。その歴史的な大会で全国のファンを熱くさせた試合がある。準々決勝第4試合。徳島県立徳島商業と富山県立魚津高校の一戦だ。徳島商エースの板東英二と魚津・村椿輝雄の緊迫した投げ合いはナイター照明が点灯しても続き0―0のまま史上初延長18回引き分け再試合。翌日の再試合を加えた27回のドラマは名勝負として語り継がれている。
~準々決勝「徳島商VS魚津」史上初の延長18回再試合~
終戦から間もない47年センバツで優勝経験のある伝統校・徳島商と春夏通じて初出場の北陸の雄・魚津の準々決勝。ゲームは序盤から動いた。徳島商は2死一塁から二盗に成功。スコアリングポジションに走者を置く。ここで打席はエースで4番の板東。村椿の直球をとらえ左前へ。二塁走者は本塁へ突入するもタッチアウト。先制機を逃した。一方の魚津は2回に板東を追い詰める。敵失と2つの四球で1死満塁。スクイズも考えられる場面だったが8番・沢崎は二飛。9番・盛本もワインドアップから投げ込む板東の速球に詰まり一ゴロに倒れる。
中盤、魚津は板東に手も足も出ない。7回、徳島商は無死二塁と村椿を攻め板東の痛烈な当たりは遊撃正面のゴロ。二塁走者が三塁を狙い挟殺プレーで憤死。さらに打者走者の板東も二塁を欲張り併殺となる。2死から満塁のチャンスを築くが7番・大坂が三振に倒れた。0―0のまま試合は延長に突入した。
~剛腕の板東 ようやく立った大舞台 17三振 15三振~
大会前から徳島商・板東は「超ド級」の豪腕として注目されていた。1年時の56年夏、徳島商は甲子園に出場したが平安(京都)の前に1回戦負け。板東の出番はなかった。56年秋の四国大会では3位に終わって翌57年センバツを逃し、57年夏は徳島の代表決定戦(徳島大会準決勝)で敗退。同年秋も四国大会で3位に終わり、センバツに出場できなかった。3年生最後の夏、ようやく甲子園の大舞台に立つ夢がかなったのである。
2回戦(初戦)の秋田商戦から豪腕がうなった。ダイナミックなフォームから投げ込む速球が内外角の低めに伸び、カーブが落ちる。2回、4番の加賀谷勝から5連続三振。4回2死から3番・三浦に右前打を許したが、これが唯一の安打。1安打、17奪三振の完封劇で甲子園デビューを飾った。故郷・徳島県板東町(現鳴門市)の大麻比古神社のお守り札を首からぶらさげてのインタビューでは「きょうは調子は良くなかった。それでカーブを多投したが、第一戦をものにして自信になった。もっとびしびし投げる」。言葉通り、3回戦では八女(福岡)相手に毎回の15奪三振。ここでもエースはまるで野球評論家のようによくしゃべった。
「なぜかきょうは不吉な予感がした。なぜか分からない。夕べ暑かったから睡眠不足になったようです。ストレートを主に投げたが向こうの打者はやはり秋田商より一枚上のようだった。短く持って当ててくるから恐ろしかった。監督さんがうまいのだろうと思った」。余裕の笑みを浮かべ魚津戦を迎えた。
~北陸の快腕・村椿「大物」浪華商完封で乗った~
一方の村椿は“大物食い”で勝ち上がってきた。1回戦は浪華商(現大体大浪商)。大会初の日曜日の第2試合。スタンドは超満員50000人の観衆で埋まった。浪華商は春2度、夏1度の優勝経験がある地元大阪の強豪で、この年の春のセンバツは無念の出場辞退。夏にかけていた。村椿は強打の浪華商相手にキレのある直球で凡打の山を築いていく。終わってみれば散発4安打1四球の完封勝利を挙げた。
2回戦は春のセンバツ4強の明治(現明大明治=東京)。東京大会決勝では高校球界のスーパースター王貞治を擁する早実を撃破。それも延長12回4点を奪われながら、王を追い詰めKO。5点を挙げて劇的なサヨナラで甲子園切符をつかみとっている。村椿も明治の驚異的な粘りに苦しんだ。4点リードの8回、明治打線につかまり1点差。9回はバックの美技に救われ6失点ながら勝ち進んだ。3回戦も群馬の古豪・桐生を完封。板東との対決の舞台に上がった。
~この大会から導入「延長18回」改正の発端は板東だった~
甲子園の大時計は18時半近くを指していた。カクテル光線が聖地を照らす。延長の死闘が続いていた。徳島商は10回から15回までノーヒット。16回ようやく四球で出塁するが攻めきれない。0―0のまま18回を迎えた。実は両チームのナインのほとんどは延長18回引き分け再試合の規定を知らなかった。
規定はこの大会から導入されたものだった。同年4月26日の春季四国大会の準決勝で徳島商・板東は高知商戦で延長16回21奪三振の完投勝利。28日の決勝では高松商相手に延長25回を投げ抜いて敗れている。たった一人の投手が中1日で41回。全国高等学校野球連盟(1963年に日本高等学校野球連盟の改称)は事態を重く受け止め、18回引き分け再試合のルール改正を行った。
~18回 徳島商スクイズ、重盗失敗 魚津が耐えた~
膠着(こうちゃく)状態が続いていた試合は18回に動いた。徳島商は1死一、三塁の好機。ここで7番・大坂にスクイズのサイン。村椿のウエスト気味の直球を当てにいくが捕邪飛に。2死となったが、須本監督は次の一手を打つ。一塁走者にスタートを切らせ、三塁走者が本塁を突く重盗。だが魚津の守備陣は冷静だった。二塁手から本塁送球、タッチアウト。徳島商の秘策は実らなかった。その裏、魚津は1死から河田の打球は中堅手の頭を越えた。三塁を狙ったが徳島商の中継プレーに阻まれた。
板東18回6安打25三振
村椿18回7安打9三振
板東をきっかけに行われたルール改正の適用1号が板東というドラマのような巡り合わせ。「18回引き分け再試合」。勝負の行方は翌日に持ち越された。
板東「前半ストレートが思うように決まらずちょっと苦しかったが、後半戦に伸びが出てきて楽になった。相手打線は別に怖いとは思わなかったがじりじり食いついてくるのに弱った。明日もまた全力を振り絞って頑張りたい。試合が長くなって腹が減ってしょうがなかった」
村椿「最初の暑いときは少しへばりましたが、涼しくなるにつれて元気が出てきてこの調子なら勝てると思いました。引き分けに終わり一気に疲れが出てきました。ただ今晩は何も考えずに寝るだけです。明日も完投する自信は十分にあります」
当時、球審は試合後、マスコミの取材に必ず試合の講評を述べていた。死闘を間近で見ていた相田球審は「よく戦った。何と言葉に表したらいいのか、私も審判生活10年になりますがこのような感激を味わったのは初めて。どちらにも勝たせてやりたい気になりました」と熱く語った。
~通算83奪三振 板東再試合制すも…決勝で柳井に不覚~
8月17日の再試合。魚津は村椿を先発させず1年生の森内がマウンドに立った。徳島商は4回大坂の適時打で22イニング目にして待望の先取点を奪った。ここで村椿が救援登板。徳島商のスタンドでは阿波踊りが始まり、魚津のスタンドでは大漁旗が振られた。甲子園の興奮は再び最高潮に達した。6回には徳島商が伝統校らしい攻撃。スクイズを2つ決めリードを3点に広げた。魚津も食い下がる。7回敵失に乗じてバントと犠飛で板東から1点をもぎ取った。8回には2安打と死球で2死満塁。長打が出れば逆転の好機を築いた。だが板東は崩れない。直球とカーブで簡単に追い込むと最後は快速球で空振り三振に仕留めた。板東は9回を投げきり9三振。1932年(昭和7年)明石中・楠本が記録した「64」を上回る66奪三振の新記録を樹立した。
死闘を制した板東は準決勝でも作新学院(栃木)相手に14奪三振の完投勝利。決勝は柳井(山口)相手に7失点。その右手に深紅の大旗をつかむことはできなかった。通算奪三振「83」の大記録は令和になっても燦然と輝いている。
~板東はプロ77勝 同世代には王、張本がいた~
〇‥板東―村椿の名勝負が生まれた昭和33年夏の甲子園。大会後、出場した多くの選手がプロの門を叩いた。板東は中日入りして通算77勝。多治見工の河村保彦も中日に入り74勝を挙げた。高松商の岡村浩二は立大を経て阪急入り。1969年日本シリーズ、巨人・土井正三との本塁クロスプレーをめぐりシリーズ史上初となる退場となるなど話題になった。敦賀の辻佳紀は明大を経て阪神入り「ヒゲ辻」として人気者だった。佐賀1年生の永淵洋三は社会人を経て近鉄入り。69年首位打者を張本勲と分け合った。この夏の甲子園には出場していないが「板東―村椿」世代には早実の王貞治。浪華商の張本勲らがいる。魚津・村椿は社会人・三菱重工入り。プロには進まなかった。
【昭和33年出来事】3月=関門トンネル開通 4月=巨人・長嶋茂雄デビュー4三振 11月=皇太子・明仁親王と正田美智子さんの婚約を発表 ▼プロ野球=セ巨人、パ西鉄▼ヒット曲「無法松の一生」
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