初出場・札幌大谷1勝あと一歩 船尾監督がエース森谷に感謝「全てにおいて勝ちゲームつくった」

[ 2022年8月10日 04:00 ]

第104回全国高校野球選手権第4日・1回戦   札幌大谷2ー3二松学舎大付 ( 2022年8月9日    甲子園 )

<二松学舎大付・札幌大谷>サヨナラ負けし、悔しい表情でベンチに戻る札幌大谷・森谷(右)と佐々木のバッテリー(撮影・亀井 直樹)
Photo By スポニチ

 南北海道代表の札幌大谷は二松学舎大付(東東京)に2―3でサヨナラ負け。初出場初勝利にあと一歩届かなかった。9回2死から同点に追いつく粘りを見せたが、その裏1死一、二塁から左翼線安打に失策が絡んでサヨナラを喫した。138球を粘投したプロ注目最速148キロ左腕の森谷大誠(3年)は、後輩に夏1勝を託した。

 反撃ののろしは8回に上がった。1死から天野凰介(3年)が右翼線三塁打。郡山遥翔(3年)の打球が遊撃手の失策を誘って夏の甲子園初得点を刻んだ。そして9回。2死になっても諦めない。2安打で一、三塁。暴投で2―2に追いついた。

 攻撃の粘り。それはマウンドの森谷の粘りが引き出したものだった。「経験のない暑さで投手だけではなく、野手も9回持つか不安だった」という船尾隆広監督(51)の懸念を吹き飛ばした。気温34度の暑さの中、「思ったより暑くないと思った」と森谷の集中力は切れることがなかった。

 初回いきなり先頭打者に直球を二塁打されるなどして先制点を与えたが、体が突っ込む悪癖を2回以降修正した。直球狙いに気付いて、中盤以降は変化球主体でかわした。9安打を許しながら、粘り強くピンチをしのぐ姿に指揮官は「凄く成長した」とねぎらった。

 変化球でストライクが取れず、直球を痛打され、昨秋、今春と全道大会にも出場できなかった。悔しさから管理栄養士の母・まゆみさん(42)に相談し、体脂肪率を20%から12%に落とした。関心のなかったウエートトレーニングにも力を入れた。肉体に加え、昨秋の大会後から日誌を付けて、メンタル面も着実に成長した。

 9回のピンチではマウンドに来た佐々木涼斗捕手(2年)に「この状況を楽しんで絶対に勝とう」と頼もしく言った。1死一、二塁で打たれた打球は左翼線へ。必死に追いついて差し出したグラブの下をボールが抜けた瞬間、天野は足をつって転倒した。「本当にごめんという言葉を交わした」と森谷。体力の限界の中で戦った仲間を責めることなく、笑顔で迎えた。

 帽子のマークをリニューアルして臨んだ甲子園。勝利に届かなかったが、船尾監督は「胸を張って帰ることができる」と言い、「全てにおいて勝ちゲームをつくったのは森谷のおかげ」と今夏急成長したエースに感謝した。プロ志望届の提出を含め進路について「まだ考えていない」と答えた森谷。「楽しかった」と138球を堪能して甲子園を後にした。(石川 加奈子)

 ≪飯田「最高の3年間だった」≫9回2死一塁から右前打で好機を広げた飯田星哉(3年)は「最後に自分たちの力を出せたと思う」と振り返った。9回2死から代打・森寛斗(3年)が右前打で出塁。「前の打者(森)がつないでくれた。自分も次につなごうと思った」と積極的に初球を叩いた。船尾監督が「南大会同様に一生懸命やってくれていて感動した」と振り返った最終盤の粘り。チーム安打数は二松学舎大付の9安打を上回る10安打で、地方大会チーム打率・425の力を見せた。コロナ禍もあった3年間だったが、飯田は「最高の3年間だった」と言い切った。

続きを表示

2022年8月10日のニュース