規格外ルーキー・佐藤輝の成長支えた“金言”とは… 阪神・サンズインタビュー(上)

[ 2021年6月16日 05:30 ]

あふれる猛虎愛も魅力的な阪神・サンズ
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 阪神のジェリー・サンズ外野手(33)が、本紙のインタビューに応じ、ドラフト1位・佐藤輝明内野手(22)との秘話を明かした。来日2年目の今季は積極的に各選手とコミュニケーションを取るS砲。自身の経験を踏まえ、時には配球面でも助言を送る。目指すは16年ぶりのリーグ優勝と36年ぶりの日本一。共闘を誓う“サンズ先生”が、グラウンド外でも一役買う。(聞き手・長谷川 凡記、阪井 日向) 

 ――よく佐藤輝にアドバイスしているが、どのようなことを話しているのか。

 「スイングとかバッティングの技術面に関してははっきり言ってほぼ何も言ってない。彼は素晴らしいスイングをしてますし、ご覧になって分かるように才能は素晴らしいものを持っているので。ただ、相手投手がこんなふうに投げてくるんじゃないかなとか、それに対してどういう準備やアプローチで打席に立つのがいいかの話を、できるだけするようにはしています。自分が彼の年齢のときに学ぼうとしたことを、彼に伝えることによって自分が10年以上かかったことを、もしかしたら数年でヒントとして学んでくれれば、より彼の成長のスピードも上がるんじゃないかなと思いますし」

 ――配球に関するやりとりで印象に残る場面は?

 「甲子園での5月2日広島戦でそういうピッチャーの攻め方みたいな話をした時には、うまくいって彼が満塁ホームラン打ってくれました。ああいう形でスイングうんぬんよりはアプローチというか、こういう配球が多いんじゃないかとかそんな話が主ですね」

 ――アドバイスを送る中で自身が気づかされることもある。

 「ありますね。いろんな若い選手に話をしていく中で、話を聞く中で自分もそういう時があったなとか、最近もこんな考えでいたなとか。ちょっと思い出せるじゃないですけども、もう1回、基本に戻れるというか。その中でそれを練習に取り入れて、基本に戻ってしっかりやろうっていうようなことはあるので。自分にもいい刺激というか」

 ――サンズのコミュニケーションがいかされた上で、優勝できればベスト。

 「もちろん個の力が上がればそれがチームにつながることは明らかだと思う。自分自身できるだけの話はもちろんしたいですけど、じゃあ若い選手にジェリーに教わったからとか、サンズのおかげと言ってもらおうと、思って言ってるわけでは決してないので。自分自身の助けにもなりますし、それが他の選手のプラスになればな、とはもちろん思います。さっきも言いましたけど個の力が上がれば絶対にチームの総合力にはつながると思いますので、それが結果的にチームの優勝に近づくための大事な道だと思う。それを楽しみながらできている。そういうアドバイスとか話をすること自体がすごく好きなので、できるだけしていきたいなと思いますし、結果的にチームのプラスになればなと思います」

 ――佐藤輝に話を戻すが、似ている選手は思い浮かぶか?

 「いろんなチームでプレーしたんでね…。なかなか思いつかないんだけど、スイング自体はヤンキースのアーロン・ジャッジの左バージョンかなと。高い位置で構えて足の上げ方とか、そういうスイングでいうとジャッジに近いのかなと。彼とは同じチームでやったことは無いですし、対戦が1回あるぐらいなんですけど」

 ――指導者と違って選手目線でできるアドバイスがある。

 「意識しているというか、やっぱり違う人から言われるとまた違った取り入れ方というか、聞こえ方が違うのかなと思うので。あまりメンタルとか技術とかではなく、例えば自分の両親に言われるのと、誰か友達の両親に言われるのでは、同じことを言われているようでちょっと聞こえ方も違ったりする。選手にとって、自分自身の経験がアメリカでやってきた部分と、日本人が経験してきた野球とは少し違いますし。スイングだったり取り組み方だったり、いろいろなところで違いがあると思うので。違う言われ方をしたら他の選手たちにとって『あ、そういうことか』とそれが分かりやすいように聞こえたり、何かひらめいたりする部分もあるかなとは思うので。自分が積んできた経験をできるだけ伝えられたらな、という思いはありますね」

 ――ここまでの戦いを振り返って。

 「やっぱり、ここまで戦ってきて、個人的には数字を見てもらったら分かると思いますけどまぁまぁの内容、結果は残せているかなと思いますね。ホームランの数もそうですし、いろんな数字を見てもらっても、特別ずば抜けた数字は確かにないですけど、全体的にはそれなりの成績は残せたなと思うので。でも少し波が大きかったというか、今週はいい週だったなというときもあれば、今週は全然だったなというような波が大きかった気もする。去年は後半戦、自分自身かなり苦しんだので、今後に向けて去年のようなことがないように、もう少し安定した成績を残せるようにというのはいつでもそうですが、しっかり意識して取り組むべきことかな」

 ――夏場に向けて意気込みを。

 「どんどん暑くなりますし、厳しい戦いが続くと思う。個々の選手がしっかり体調管理をして、暑さに負けないように。しっかり体力と技術も、心身ともに力強さを維持しながら戦っていくことが大事。具体的な数字はないですが、とにかくずっと上の位置にいられるように。今後も厳しい戦いが続きますが、健康面に気をつけて、ケガをせずに頑張っていきたい」

 ▽アーロン・ジャッジ 2メートル1、127キロの恵まれた体格を誇る29歳の外野手。13年ドラフト1巡目(全体32位)でヤンキースと契約。16年8月13日にメジャーデビューし初打席本塁打。17年は52本塁打、208三振がリーグ最多で、満票で新人王に選ばれた。

【5月2日の佐藤輝満塁弾VTR】

 ○…5月2日の広島戦で、初めて4番で先発。野村の前に2打席凡退後、サンズから「投手はピンチの場面で真っすぐ、真っすぐは行きづらいし、落とすボールで打ち取ろうとしてくる。逆方向に打つスタンスでいけば、チェンジアップも前で拾えたり見送れる」と助言をもらった。すると、第3打席は5回無死満塁からチェンジアップを右越えへ本塁打。「しっかり意識して前で拾って打つことができた。ジェリー(サンズ)に感謝です」とコメントした。

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