【アニ漫研究部】WBCに眠る?新しい野球漫画の切り口

[ 2023年3月20日 06:00 ]

WBCで活躍する大谷(左)。野球漫画『グラゼニ』では大谷そっくりの『王嶋貞雄』が登場
Photo By スポニチ

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はいよいよ4強の戦いへ――。侍ジャパンこと日本代表は、あと2勝で3度目の世界一を手にします。今回の「アニ漫研究部」は、野球漫画で描かれた“世界”について語り合いました。

 スポニチ本紙デスク 野球漫画でメジャーリーグや“世界”を描いた作品といえば、やっぱり満田拓也氏の「MAJOR」だね。主人公・茂野吾郎のリトルリーグからメジャーリーグまでを描いた“野球大河ドラマ”。高校卒業後に渡米し、2年目にメジャーに昇格するけど、その前に日本代表として「W杯」に出た。

 漫画編集者 野呂、松若、コジローら実在選手を思わせるキャラ勢ぞろいの豪華メンバーは漫画だけどワクワクした。

 本紙野球記者 この「W杯」が掲載誌の週刊少年サンデーで描かれたのは2004年頃。実際にWBCが行われたのは06年で、開催が決まったのはその前年の05年春。五輪以外での“国別対抗世界一決定戦”は「MAJOR」で一足先に実現した形だ。

 デスク 今思うと、初めて野球漫画で描かれた国別世界一決定戦だったかもね。日米野球は、梶原一騎、川崎のぼる両氏の「巨人の星」などで描かれていたけど。こういう世界大会はなかった。

 野球記者 90年代まではメジャーリーグも今ほど身近じゃなかったし、野球漫画も“世界”を描かなくてよかった。ヒラマツ・ミノル氏の「REGGIE」を筆頭に来日した外国人選手は描かれたけど、海を渡った日本人選手は漫画でも描かれた記憶はない。

 アニメライター 90年代後半に放送された「タッチ」の続編アニメでタッちゃんが渡米して野球していたのは覚えている。

 漫画編集者 95年に野茂氏が渡米し、サッカーでW杯が身近になり、野球漫画も世界を意識するようになったと思う。

 本紙デスク でも、がっつりメジャー挑戦を描いた漫画は意外に少ない印象。「MAJOR」以外では森高夕次、足立金太郎両氏の「グラゼニ」、さだやす圭氏の「なんと孫六」「フォーシーム」シリーズくらい?

 本紙野球記者 そもそもプロより、高校野球を題材にした漫画の方が断然多いからね。今だと、なきぼくろ氏の「バトルスタディーズ」や、ひぐちアサ氏の「おおきく振りかぶって」、あだち充氏の「MIX」などが人気だけど、少年読者により身近という点はもちろん、やはり「甲子園」というドラマ性が大きいんだろうね。

 漫画編集者 プロ野球が舞台の漫画って、ここ20~30年を振り返っても単行本10巻を超える作品はそんなに多くはない。「あぶさん」や「ドカベン」シリーズなど水島新司氏の作品は別格として、甲斐谷忍氏の「ONE OUTS」20巻、こせきこうじ氏の「ペナントレース やまだたいちの奇蹟」14巻、ハロルド作石氏の「ストッパー毒島」12巻といったところだ。

 デスク 連載中の作品では、クロマツテツロウ氏の「ドラフトキング」が14巻まで出てるね。スカウトが主人公だから、プロ野球が舞台とは言い切れないけど。

 アニメライター メジャーを舞台にするのは、連載中の作品では「グラゼニ~大リーグ編~」くらいかな。36歳になった主人公の凡田投手が、ナックルボーラーとなって挑戦している。

 野球記者 大谷選手そっくりの二刀流選手「王嶋貞雄」との対決も描かれた。

 漫画編集者 「なんと孫六」は、月刊少年マガジンで33年続いた連載を2014年に終了させたけど、こちらも「MAJOR」のような“大河もの”。主人公・甲斐孫六の高校からプロ野球、メジャーまでの活躍を描いた。終盤は、WBCならぬWBTを日本代表として戦った。

 デスク WBTの途中で連載が終わったのは残念だった。孫六は、大谷選手ばりの投打二刀流。相撲漫画「ああ播磨灘」など型にはまらない主人公を描くのが得意な、さだやす氏らしい破天荒な選手だった。

 野球記者 同氏の作品では「フォーシーム」シリーズもメジャーが舞台。破天荒な契約を結んだ主人公・逢坂投手の活躍、フロントとの駆け引きが面白い。

 漫画編集者 ほかにも「デカスロン」の山田芳裕さんが「ジャイアント」で、メジャーに挑戦する大卒選手を描いていた。それくらいかな。日本以外を舞台とする野球漫画は。

 デスク 以前、ある漫画家を取材したときに「野球漫画はパターンがほぼ出尽くしたと言われ、新しい切り口が難しい」と聞いたことがあるけど、メジャーや世界大会はまだ切り口があるかもしれないね。

 アニメライター 「ジャイアント」の大卒選手は、ドラフトで指名されず、就職先の社会人チームも廃部という八方塞がりの状況からメジャーを目指す設定だった。

 漫画編集者 もしかしたらWBCに新しい野球漫画のヒントがあるかもしれない。近年はサッカーに押され気味の野球だけど、これだけ注目を集めてるんだから、まだ切り口はありそうだ。

続きを表示

2023年3月20日のニュース