【芸人 イチオシ】なすなかにし、愛してやまない“松竹芸能の師匠”の偉大さとは

[ 2022年9月10日 09:00 ]

TBSの朝の帯バラエティー「ラヴィット!」のポーズを決める「なすなかにし」の中西茂樹(左)、那須晃行
Photo By スポニチ

 【芸人 イチオシ】いとこ同士のしゃべくり漫才コンビ「なすなかにし」の中西茂樹(44)と那須晃行(41)はパンチが効いた「師匠」が大好物だ。所属事務所の松竹芸能には、息を吹きかけて薄い髪を吹き飛ばすギャグでおなじみの「海原はるか・かなた」や現役最年長の兄弟コンビ「酒井くにお・とおる」ら個性豊かな“大物”がずらりと名を連ねる。

 とくに尊敬してやまないのが「一番お世話になった」という横山ひろし(75)。2005年にABCお笑い新人グランプリで優秀新人賞を取った時には、歩きながら黙って振り返りもせずに1万円を握った拳を差し出すような粋な師匠だ。今でも、なすなかのテレビ番組をチェックしており、最近、吉本興業の麒麟・川島がMCを務めるTBS「ラヴィット!」のロケでフル回転している姿を見て「ほんまに良かったな」と喜んでくれたという。

 もちろん芸人としての姿勢で学ぶべきことは多い。中西いわく「常に新しいことを考えている」というアグレシッブさ。こん身の最新ネタはタレント芹那のモノマネ。令和にちょっとだけズレてる感もあるが、それはご愛きょう。ただ、すべてのモノマネが一緒に見えるという難点もある。数年前に番組オーディションでこん身の芹那を繰り出したが、出川哲朗のモノマネと区別がつかず「審査員の先生が0点を付けて落ちました」(中西)。芸歴50年を超えていても、なりふり構わぬ若手並みのガッツの持ち主だ。

 師匠には、お笑いの深刻な悩みを相談することもある。最近、漫才中にどこに視線を向ければいいか分からなくなった中西がアドバイスを求めると、ひろしは「ボクは客席全体を見ている。中西くんはボケだから、ツッコミの人間とは違うかもしれん」。ボケ担当の相方・横山たかしが、どこを見ていたのかを聞くと「たかしはな、緊張していて何にも見てなかったな」と遠い目。まったく参考にならなかった。「酒井くにお・とおる」のとおるにも同じ質問をしたところ、返ってきた答えは「わしはもう老眼で見えん」。師匠からのアドバイスは直接ではなく、その背中を見て学ぶことの方が良いのかもしれない。

 「松竹はどんどんいじってほしいという師匠が多い。みんな横並びな感じがする」(中西)。この後輩との距離の近さが良さである。舞台に上がれば誰もが笑いにどん欲なチャレンジャーで芸歴は関係ない。「師匠方はぐいぐい前に出る」と口をそろえる2人。「パピヨンズ」のちよみは前へ前への精神でボケ倒し、前に出過ぎて実際に舞台から落ちてしまったこともある。物理的に前へ出すぎたのは、このちよみくらい。「お客さんもびっくり」というパワフルさだ。ちなみにプライベートでは万引きGメンとしてアルバイトしていたが、3回捕まえたうち、2回が間違いでクビになった逸話を持つ。

 初となる東京での寄席「下北沢角座 松竹芸能お笑いフェスティバル」(13~19日、シアター711)では、この大阪でしか見ることのできない“ツチノコ”級の師匠が勢ぞろいする。「師匠の気合入りすぎてすべり倒すかもしれませんが、すべっているところも、なかなか見られない。それもそれで面白い」(中西)。いろんな見方が楽しめそうだ。

 なすなかも芸歴20年を超え、ベテランと呼ばれる域になってきた。かつて年齢の割に完成されすぎていると言われた安定感のある掛け合いは、おじさんになった今は大きな武器。「いつかは師匠と呼ばれたい」と那須が言えば、中西も「この前、番組のオーディションで我々“先生”と呼ばれましたけど、師匠の手前くらい。もうちょいですかね」。松竹伝統の大師匠への道。そのはるかなる頂には、さらなる幸せな笑いが待っている。

 《マンスリーライブ開催中》なすなかは芸歴22周年を迎え、全22回のマンスリーライブ「なすなかと22」を開催中だ。新ネタを含む漫才を中心に歌ネタなどを披露。毎回1組のゲストを呼び、トーク企画も行っている。今月は22日にお笑いコンビ「TOKYO COOL」を招いて新宿バティオスで開催する。劇場チケットは既に完売しており、配信チケットのみ発売している。

 ◇なすなかにし 2001年結成

 中西 茂樹(なかにし・しげき) 1977年(昭52)9月24日生まれ、大阪府出身の44歳。ボケ担当。趣味はゲーム。

 那須 晃行(なす・あきゆき) 1980年(昭55)12月14日生まれ、京都府出身の41歳。ツッコミ担当。趣味は犬の世話。

続きを表示

2022年9月10日のニュース