NHK特設サイト テレビ70年の宝箱

[ 2022年7月1日 08:00 ]

テレビ放送開始70年特設サイトのトップページ(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHKテレビ放送開始70年特設サイトが面白い。これまで同局が放送してきたほぼ全ての定時番組と主な特集番組を紹介するものだ。

 例えば、思い出深い人形劇「新八犬伝」(1973~74年度放送)。サイトにある「番組・記事を探す」で検索すると、ダイジェスト映像や関連記事などが出てくる。

 久しぶりに目にする「新八犬伝」。子供の頃に連日聞いていたテーマ曲、辻村ジュサブローさんの忘れがたい人形、坂本九さんの名調子の語りに引き込まれる。

 資料も豊富で、当時の番組表(「新八犬伝」が少年ドラマシリーズと天気予報・ニュースの間の午後6時30分から放送されていたことが分かる)、主な出演者(クリックすると、他の出演番組が表示される)、放送リスト(全464話の放送日時など)がある。

 続けて「新八犬伝」に関する記事を読んだり、関連映像として人形劇「真田十勇士」(75~76年度)などを見たりしていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。さらに、同じ人形劇「ひょっこりひょうたん島」(64~68年度)やバラエティー番組「夢であいましょう」(61~65年度)、報道番組「ニュースセンター9時」(74年~87年度)など、次々に検索すると、ますます深みにはまる。まるでテレビの宝箱のようだ。

 サイトには、テレビ放送開始70年記念のスペシャルインタビューとして黒柳徹子、伊東四朗、中村メイコ、美輪明宏の記事も並んでいる。

 なぜ、このようなサイトが生まれたのか?NHKグローバルメディアサービス・ニュース制作センター(アーカイブスグループ)統括部長・権田裕巳氏はこう語る。

 「来年2月のテレビ放送開始70年に向けて『完全版テレビ放送史』をまとめようと考えました。NHKがこれまでどのような定時番組を放送し、それらがどのように変遷して来たのか、全て調べました。過去の番組にはデータが不十分なものもあったので、それらを補完しました。みなさんに懐かしい番組に触れて頂くのと同時に、これから再放送やネット展開でアーカイブを活用していくための基礎情報にもなります」

 このサイトの構想は放送60年の後に生まれ、約3年前に本格的な作業がスタート。毎年刊行されている「NHK年鑑」を基に同局の定時番組を調べ、残存している番組映像の中から使用可能な映像を探して編集し、権利処理をした上でサイトに載せる作業を行った。

 開設は今年3月31日。記事の執筆や映像の編集、イラストの作成など、外部の関係者も含めると、これまで数十人が携わってきたという。

 権田氏は「これまで世に出ていない映像もピックアップしています。例えば、黒柳徹子さんが出演していた『英語会話』(58~75年度)、『できるかな』(70~89年度)の前に『ノッポさん』が出演していた『なにしてあそぼう』(66~69年度)、『ためしてガッテン』(95~2015年度)の前身の『ウルトラアイ』(1978~85年度)、少年ドラマシリーズ(71~83年度)…。いろいろ検索して頂くと、こんな映像が残っていたのか!?という番組にたどり着けます」と語る。

 しかし、これで完成したわけではない。大みそか恒例の「紅白歌合戦」(51年度~)をはじめ、映像を使用する上での権利処理が残っている番組がまだある。

 権田氏は「2025年に日本の放送開始100年を迎えるに当たり、ラジオ番組を含めて充実させていくという課題もあります。このサイトが今後の放送やネット展開のベースの役割も果たさなければいけないので、ここがスタートです」と話す。

 ラジオの古い番組も興味深く、今後の充実が楽しみだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2022年7月1日のニュース