藤井2冠、リーグ残留へ根性の1勝 ゴキゲン中飛車攻略で連敗止めた

[ 2020年10月30日 05:30 ]

王将戦挑戦者決定リーグ

リーグ初勝利をあげた藤井2冠
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 将棋の第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負(来年1月開幕予定)で渡辺明王将(36)の対戦者を決める挑戦者決定リーグは29日、東京都渋谷区の将棋会館で2局を行い、藤井聡太2冠(18)は佐藤天彦九段(32)を118手で下しリーグ初勝利を挙げた。羽生善治九段(50)―広瀬章人八段(33)戦は羽生が83手で快勝し、開幕3連勝を飾った。

 時速150キロの剛球を待ち構えていたところに、絶品のチェンジアップが投じられた。

 先手・佐藤の放った渾身(こんしん)の秘策は7手目の▲5八飛。「ゴキゲン中飛車」と呼ばれる異色の戦法だ。ガチガチの居飛車党が仕掛けた熟練の技に、通常なら思い切りつんのめって空振りするところ。だが藤井は踏ん張った。「やや意外ではありましたが、中飛車相手に以前は何局か指したことがある。それを思い出しながら指しました」。2枚の銀を積極的に前線へと送り出す急襲に方針を転換。午前中から激闘モードへと持ち込んでいく。

 「中盤うまく動かれて、こちらの王の薄い形での戦いが避けられなくなった。ちょっと自信のない展開が長かった気がします」
 佐藤の67手目▲6五銀の筋を読んでおらず苦境に陥りかけたが、以降はピンチをしのぎつつ、相手の隙を突いて指しやすい中終盤へ。94手目△7八飛成と竜を作った場面で「少し指せる形になった」と胸をなで下ろしたという。もっともその周辺はほぼ勝利を手中にしていたのだが。

 振り返れば3日前も居飛車党の永瀬拓矢王座(28)に四間飛車を挑まれ、大混戦の末敗れたばかり。プロデビュー以来、順風満帆過ぎる出世街道を歩んできた藤井にとっては、百戦錬磨の先輩から受ける「通過儀礼」。一筋縄ではいかないトッププロ相手にたっぷりと汗をかいたこの2局だ。

 半ば根性でつかみ取ったリーグ初勝利。マスクの中に笑みを隠しながら「成績のことは考えずに残り2局も全力を尽くしたい」と話した。連勝を飾ればリーグ残留(7人中上位4人)の可能性が高まる。戦いは継続中だ。 (我満 晴朗)

 《佐藤天彦九段、無念の陥落》4敗目を喫した佐藤は無念のリーグ陥落。「内容的にも今の自分の実力」と心境を明かした。過去2戦2敗の藤井相手に「隠し玉」とも言うべき中飛車をぶつけたのは「いつか指してみたかった」。藤井の動揺を誘ったかに見えたが、寄り切られた。「あと1局しっかり戦い、来期はリーグに戻ってきたい」。

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