西武・隅田 涙堪え「長らくお待たせしました」デビュー戦勝利以来投げ続け12連敗「誰にもできない経験」

[ 2023年4月19日 21:38 ]

パ・リーグ   西武3―2ソフトバンク ( 2023年4月19日    ベルーナD )

<西・ソ>目を潤ませながら――。389日ぶりとなるプロ2勝目を挙げ、ヒーローインタビュー中に汗を拭う隅田(撮影・白鳥 佳樹)
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 西武の2年目左腕・隅田知一郎(23)が今季3試合目の先発登板。ソフトバンク打線を相手に6回を98球5安打3四球も1失点の力投を見せ、シーズンをまたいでの球団ワーストとなる連敗を12で止めた。昨年3月26日オリックス戦(ベルーナD)でプロ初登板初先発初勝利を挙げて以来389日ぶりの勝利で、待ちに待ったプロ2勝目。チームは5年ぶりとなる両リーグ10勝一番乗りを決めた。

 マキノン、若林に続き大トリで本拠地のお立ち台に立った隅田の目は涙を堪え潤んでいた。「長らくお待たせしました」。1年以上、ようやく抜けた長いトンネル。大歓声が沸き、ファンから大きな大きな拍手が贈られると笑顔ながら目は真っ赤に染まった。「どうにかしたいという気持ちは常に持っていました」と語った23歳は「昨年からずっと我慢して応援してもらっていた。やっと、こうやって勝つことができてうれしい。(プロ)初勝利の時と同じぐらいうれしいです」と爽やかにはにかんだ。

 若林が先制ソロ、マキノンが決勝2ランと2発の大きな本塁打の援護があった。3点。決して多くはないが、援護に恵まれない試合も多かった若き左腕は「いつも打ってくれると信じている。打ってもらった瞬間は立ち上がっちゃいました」とニッコリ。自身の立ち上がり、投球については「本当にシンプルに考えてストライクゾーン、ベース板の上で、柘植さんのリードを信じて腕を振っていこうと投げた。前回も前々回も初回に点を取られた。そこは自分でも意識して慎重に入ることができた」と及第点を与えた。

 インタビュー中にはイヤホンに不具合が生じて、交換するために中断するハプニングも。しかし、一瞬静まり返った球場には「隅田、おめでとう!」「よく我慢した。ナイスピッチ~」など祝福の言葉が飛び交った。その声は隅田にも届き、笑顔で応える場面もあった。

 イヤホンを付け替えヒーローインタビューが再開。5回のピンチには豊田投手コーチがマウンドに行った場面については「“おなかに力を入れて、魂込めて投げなさい”と言ってもらった」と回想。豊田コーチはじめ、松井監督、ナイン、そして本拠地に駆け付けた多くのファンに背中を押されて、ようやくたどり着いたプロ2勝目だった。

 昨年3月26日のプロデビュー戦での会心の初登板初先発初勝利から投げ続け、そして負け続けてきた左腕は「昨年から我慢して使っていただいて、限りなく、誰も経験したことがないようないい経験ができていると思う。凄い、いい糧になっていると思います」と前を向いた。負けた数だけ強くなる――。ここから、西武のエースとしての本当の第一歩を踏み出す。

 ▼隅田(6回を投げ終えた後に)今日はとにかく前回登板の反省をしっかり生かして、ゾーン内で勝負しようと思っていました。柘植さんともよく話し合いながら、自分の持ち味であるカーブとチェンジアップをベース板付近に集めるということに集中していました。ホークス打線は左打者が多いというところもしっかり意識して、そのあたりの対策もまずまずできたと思います。

 ◇隅田 知一郎(すみだ・ちひろ) 1999年(平11)8月20日生まれ、長崎県出身の23歳。1メートル77、76キロ。左投げ左打ち。

 ☆球歴 小2から大村クラブで野球を始め、西大村中では軟式野球部に所属。波佐見では3年夏に甲子園に出場し、初戦で彦根東に逆転サヨナラ負け。西日本工大では1年春にリーグ戦デビュー。

 ☆忘れ物 入寮時に地元の長崎で両親の車に財布を忘れたまま、空路で羽田空港に到着。担当スカウトの岳野竜也育成アマチュア担当に1万円を借りて「借金入寮」した。

 ☆妹思い 契約合意時に大学進学希望だった高3の妹・葵さん(18)の学費を契約金で負担すると宣言。

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