【内田雅也の追球】「好球必打」が生んだ逆転サヨナラ 求められるのは積極的でかつ、粘りのある打撃

[ 2023年4月19日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-1広島 ( 2023年4月18日    甲子園 )

ベンチで戦況を見つめる岡田監督(左)と今岡コーチ
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 積極性と粘りが生んだ阪神の逆転サヨナラだった。1点を追う9回裏、広島クローザー栗林良吏に1死一塁から右翼線二塁打した木浪聖也は初球打ち、2死満塁から左中間に2点二塁打した中野拓夢も第1ストライクから打ちにいき、ファウル5本で粘って9球目を打った。いずれもヒーローである。

 2人に共通するのは初球から打ちにいく積極性である。この夜はともに4打席立った。木浪がストライクを見逃したのは1球だけ、打ちに出たのは9球ある(空振り、ファウル、打球)。中野は見逃し3球にスイング16球だった。積極果敢に打ちに出た結果が殊勲打に結びついたと言える。

 いわゆる「好球必打」である。古く「学生野球の父」飛田穂洲がつくった言葉「好球必打」だが、実際に行うのは難しい。打撃では、積極果敢はもちろん、かつ慎重さも求められるからだ。

 ゾーン内スイング率(Z―Swing%)はストライクのうち、どれだけ打ちに出たかを示す数値である。NPB統計サイト「翼」によると、セ・リーグ規定打席到達者でこの数値が最も低いのは阪神の近本光司で49・6%だった=数字は17日現在=。以下10位に梅野隆太郎58・6%、11位中野59・7%……など、阪神打者の見逃し、待球が目立っていた。

 開幕3連戦で16四球を得るなど選球、待球が奏功していた。四球数は今もリーグ最多だが、待ってばかりでは快打の好機を逃してしまう。

 監督・岡田彰布はこの日の試合前、打者に「積極的に打ちにいけ」と訓示している。開幕当初の傾向をみて、相手投手陣がストライク先行でくるようになり、阪神打者陣は後手に回っていた。

 オープン戦中盤の3月半ばと開幕当初、当欄で阪神の四球を奪う力をたたえる原稿を書いた。ただし、積極性を失ってはいけない。古今東西、カウント別で最も高打率なのは初球なのだ。

 「打ちにいきながら(悪球を)見逃せているかどうか」と3月16日付で「待ち方」を書いた際、打撃コーチ・今岡真訪が焦点を語っていた。

 木浪、中野、近本は昨年まで初球から打ちにいく積極性が持ち味の一方、四球が極端に少なかった。今年は脱皮、変身しようとしているわけだ。求められるのは積極的でかつ、粘りのある打撃なのだろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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