「ちむどんどん」良子の涙の告白場面 演出側「川口春奈さんのクランクインに撮った」

[ 2022年4月28日 08:18 ]

連続テレビ小説「ちむどんどん」第14回で、優子(仲間由紀恵)に思いを明かす良子(川口春奈)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】28日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第14回で、女優の川口春奈(27)が演じる比嘉良子が、女優の仲間由紀恵(42)が演じる母・優子の前で、涙ながらに思いを明かす場面があった。

 演出した木村隆文氏は「実は、あのシーンは川口さんのクランクインの最初に撮った。あのシーンの前に良子がハンバーガーショップでフォークダンスを踊るなどして楽しむシーンがあるが、撮影スケジュールの都合で、前後が逆になってしまった。川口さんに申し訳ないという気持ちがあったし、私自身もどんなシーンになるか不安な部分があった」と明かす。

 小学校教員の良子は毎月、給料を優子に渡しているが、今月はいつもより少ない。思いを寄せる博夫(山田裕貴)とともにフォークダンスの会に参加するため、洋服と靴を購入してしまったからだ。母に対して最初は「勉強会で本とか買った」と説明したものの、その場で思い直し、「うそついた」と打ち明ける。

 木村氏は「第1週と第2週で、子供時代の4兄妹のキャラクターを明確に描いた。良子は優等生の長女で、他人や兄妹には言えない悩み、つらい思いも母親の優子にだけは打ち明けられる。子供時代の運動会は、すねて家にこもっていたが、結果的に参加して最後は優子の胸元で泣いた。そんな親子関係の本質が大人になっても変わっていないことを、第3週のあのシーンで表現したかった。良子は20歳を過ぎて社会に出て、大人ならではの苦しみも抱えているが、子供時代のキャラクターをそのまま継承している」と説明する。

 良子が告白する場面の背景には、比嘉家の貧しさがある。子供に教える立場の人間として、貧しさを恥じないように暮らそうとしているが、どうしても恥じてしまう時がある。そんな自分が恥ずかしい…。そうした複雑な思いを、川口は初出演の朝ドラの最初の芝居で、可憐に表現してみせた。

 木村氏は「川口さんは撮影現場で子役の芝居をご覧になったことはあるかもしれないが、あのシーンを撮る段階で、第1週と第2週の映像ができていなかったので、第1週と第2週の映像はご覧になっていない。台本を第1話から深く読み込み、あのお芝居を構築されたと思う。あのシーンの背景には比嘉家の経済状況の悪さがあるが、川口さんにはそのような体験はないだろうから、想像で補った部分があると思う。川口さんは台本の流れから緻密に芝居を構築していく役者さんで、今回のようにシーンの前後を逆に撮っても揺るぎないものがある。とても素敵なお芝居をしてくださった」と話す。

 あの場面で、良子の言葉を聞いた優子は笑顔を見せる。良子の涙に対して涙で返す芝居もありえるだろうが、優子はほほえみ続けた。

 木村氏は「仲間さんが作られたお芝居だ。あのシーンではお二人に『ここで泣いてください』『ここで笑ってください』という細かい注文をしていない。優子は良子が謝った時、良子を責めることなく、新しい服を手に取って『かわいいね』『楽しかった?』と笑う。娘が楽しかったのならばそれで良いという母親としての思いからで、私もあのセリフが大好きだ。あの瞬間、撮影していて胸に迫るものがあった。仲間さんが川口さんのお芝居をしっかりと受け止めてくださったシーンだと思う」と話した。

 川口と仲間の2人が作った絶妙な空気感が名場面を生んだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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