知床観光船事故 専門家が運航会社の安全評価明記を提案「安全のための努力が分かるものを」

[ 2022年4月28日 19:55 ]

東京・赤坂のTBS社屋
Photo By スポニチ

 海難事故に詳しい東海大学海洋学部の山田吉彦教授が28日、TBS系「Nスタ」(月~金曜後3・49)にリモートで生出演し、知床半島沖で起きた観光船の遭難事故を受けて安全管理の抜本的なシステム改善の必要性を訴えた。

 乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU 1(カズワン)」は24日に消息を絶ち、これまでに11人の死亡が確認されている。海上保安庁関係者によると、この日の捜索で新たに3人が発見された。

 番組では、安全管理規程で義務づけられている欠航の具体的基準について説明した。運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長は27日の会見で、欠航の基準について波の高さ1メートル以上、風速8メートル以上、視界300メートル以下といったんは説明。その後、現在は具体的な数値を明記していないと、あやふやな発言をした。また、同社が導入していた、海の状況に応じて運航ルートを決める「条件付き運航」は同規程に盛り込まれておらず、問題視されている。

 この発言について、山田氏は「体裁だけが整っていれば、出航ができてしまう。実際に船員の経験は問題になっていない」と指摘。「しかも形だけ、通信機器があればいい、あるいは気象を確認したかどうか検証もされないまま、表面だけで運行してしまっている。この会社、船舶の運航に関しては、まったく機能していなかったということが、昨日の会見で分かりました」と憤りを口にした。

 山田氏によると、波の高さなどの判断は船長の感覚に委ねられるという。「波の高さって目視なんですね。船長の感覚で2メートル、3メートルと決めていくんですけど、それ自体、この社長は理解できないと思う。となると、船長に委ねっぱなし、船長には『とにかく航海をしなさい』という指示だったと考えられる。苦渋の選択の中での航海(だったはず)」と推測した。

 再発防止策について、山田氏は「地域ごとに海の状況は変わりますし、条件が変わります。地域と国土交通省、海上保安庁と連係した形で、ローカルルールを作っていくということが重要だと思います」と提案した。さらに、「行政、地域の観光協会は、クルーズ会社の評価みたいなものを格付けして、顧客に伝えるようなシステムを作っていかなければいけないと思います。この船がどれだけ安全のために努力しているか分かるようなもの、たとえば船長が『この海で何年経験しているベテラン船長か』ということが分かるような仕組みがあれば、顧客も安心して海に出られると思います」と、具体例を挙げて説明した。

続きを表示

2022年4月28日のニュース