メジャーの“不文律”は必要か――大量リード、3ボールからの満塁弾で波紋

[ 2020年8月22日 21:50 ]

17日のレンジャーズ戦の8回、満塁弾を放ったパドレスのタティス(AP)
Photo By AP

 パドレスのフェルナンド・タティス内野手(21)が17日(日本時間18日)のレンジャーズ戦で放った満塁弾が波紋を呼んでいる。パ軍が10―3のリードで迎えた8回に3ボールからスイングしたためで、直後に登板した投手が次打者の背中付近に報復投球した。「Unwritten Rules」(書かれざるルール)は必要なのか。メジャー取材歴25年の奥田秀樹通信員(57)が迫った。

 メジャーの不文律とは騎士道精神だ。本塁打を打ち派手に喜ぶのは礼節に欠け、相手投手の完全試合をバントで止めるのはひきょうである、と。大量得点差で勝負がついている場面で盗塁はせず、3ボールからスイングしてはらない。

 08年10月。ドジャース・黒田の騎士道精神が称賛された。フィリーズとのリーグ優勝決定シリーズで、相手投手がド軍の主力打者に露骨な内角攻めを繰り返した。不文律では「チームメートが意図的にぶつけられていたら報復すべき」。黒田は、ビクトリーノの頭部付近に投げ、両軍総出の騒ぎになった。女房役のマーティンは「黒田はサムライだ。我々を燃えさせてくれた」と話した。黒田はリーグから罰金を科せられたが、当時のジョー・トーリ監督も称えた。一躍ロサンゼルスの英雄になった。チームや仲間への忠誠を示し、守ったから。そうするしかなかった。

 タティスはメジャーのこれからをけん引する存在。この不文律も守ることで、球界の顔になり、敬意を払われる存在になる。そんなこと…という意見もあるが、それが現状だ。

 レッズの先発右腕バウアーは「なんて古くさい、だから野球は若者に人気がない」と主張する。大差がついた試合で、ファンが期待するのはスター選手の一挙手一投足なのかもしれない。本塁打増がさけばれている。6点差や7点差がひっくり返る試合もある。

 「死に体」の相手に追い打ちをかけないという精神そのものを批判すべきではない。問題があるのは「報復」のあり方だ。死球を与え、選手が万が一故障すればファンは悲しむ。ファンの存在を考えた時、一番大事なことは何かを議論すべきである。100年以上かけて作り上げてきたものにメスを入れるには、メジャー球界全体の覚悟がいる。(奥田秀樹通信員)

続きを表示

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

2020年8月22日のニュース