帰ってきた背番号「51」、選手であることにこだわり続けたイチの322日

[ 2019年3月21日 07:30 ]

ア・リーグ開幕戦   マリナーズ9―7アスレチックス ( 2019年3月20日    東京D )

3回無死二塁、イチロー(撮影・沢田 明徳)
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 昨年5月3日(日本時間同4日)に会長付特別補佐で選手登録を外れたイチローは大リーガーとして19年目の開幕の舞台に戻ってきた。イチローを取材してきた笹田幸嗣通信員(55)が、選手登録を外れても自らを律し、心と技を磨いてきた背番号51の思いに迫った。

 試合前から決まっていた2打席。結果を出せなかったことも重なった。試合後のイチローは悔しさにあふれていた。

 日本に着いた翌16日に記者会見に臨んだイチローは「ブランク」のフレーズを2度も使った。来日前のオープン戦は18打席連続無安打、最後の7打席では5三振、打率は・080。「十分に体が動く状態にはあったんですけれど…大変苦しみました」と話した。

 昨年5月3日。球団会長付特別補佐に立場を変え、19年開幕の現役復帰を目指した。周囲からは「実戦の勘が維持できるわけがない。事実上の引退」の声もあがったが、イチローは違った。

 「野球を知らない人の無責任な意見だね」

 フリー打撃では6割以上の柵越えをノルマに課し、現役復帰は本気であることをチームメートに無言で示した。試合中はひたすらにベンチ裏に設置した初動負荷理論の特殊マシンで股関節の強化に努めた。専属通訳を務めるアラン・ターナー氏は「イチローさんが、ただ椅子に座っている時間は一切なかった」と証言する。同僚のプレーに自身を重ね、気も張った。心も常にグラウンドにあった。

 地道なトレーニングで股関節の出力と回転力アップに成功した。これが飛距離と打球速度アップを狙った新打法の根幹だ。「あの期間中のマシントレーニングが下地になってるのは間違いない」と言う。だが、実戦で肌で感じたギャップは「ブランク」とのフレーズに表れたのだろう。

 新打法はオープン戦で150キロ超の球と対する中で、徐々に余分なものが省かれた。特徴だった重心を下げ、テークバックを深くとる型は、ほぼ昨季までと一緒に。唯一アレンジを加えなかったのが左手首をかぶせて握るグリップだ。専門家は「リストが利きボールに力負けしない。飛距離が伸びる」とメリットを説明する一方で「バットが少し遠回りになる」との短所も挙げるが、イチローは手をつけなかった。

 5月2日(日本時間3日)の最後のプレーから322日。球団会長付特別補佐になっても、常に試合の日はユニホームを着た。早出特打の打撃投手で指先の送球感覚を保ち、球拾いで実戦を想定しながら打球を追った。自主トレは昨年のシーズン最終戦の2日後に再開した。選手であることにこだわり、イチローは戦ってきた。

 右肘痛で出遅れている正中堅手のスミスの復帰までは、まだ少しだけ時間はある。

 【イチローの経過】

 ☆18年5月2日 アスレチックス戦に「9番・左翼」で先発出場。3打数無安打1四球1得点。
 ☆同3日 メジャー40人枠を外れ、会長付特別補佐就任を発表。シーズンの残り試合はプレーしないことを発表した。

 ☆同12日 タイガースとのダブルヘッダーで、臨時ベンチコーチとしてベンチ入り。スコット・サービス監督が長女の卒業式出席で不在のため。

 ☆6月5日 アストロズ戦前に打撃投手としてデビュー。早出特打で約100球投げた。

 ☆11月8日 GM会議の会場でジェリー・ディポトGMが日本での開幕シリーズで選手として登録する方針を明かす。

 ☆19年1月23日 マイナー契約に合意し、キャンプは招待選手として参加することが決定。

 ☆2月16日 米19年目のキャンプイン。

 ☆同22日 アスレチックスとのオープン戦に出場。296日ぶりの実戦復帰で2打数1安打2打点。

 ☆3月15日 羽田空港着チャーター便で帰国。

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