群を抜く得点能力 未到の記録に挑む広島打線

[ 2019年3月21日 09:30 ]

 【宮入徹の記録の風景】多彩な攻撃で圧倒してきた。3連覇中の広島のチーム得点は16年684、17年736、18年721といずれもリーグ最多。今季も得点が700点を超えれば、巨人が49年から51年まで706→724→702とマークした3年連続700得点以上のプロ野球記録に並ぶ。

 ただし、巨人の場合はカラクリがあって、49、50年は飛距離の出る「ラビットボール」使用時のもの。リーグ全体の得点が高い水準にあった。実際、49年の最多得点(当時1リーグ制)は阪神の735で巨人は2位。セ・リーグが発足した50年も1位松竹908、2位阪神766、3位大洋759、4位中日745に次ぎ5位。3年間でリーグ1位は51年だけだった。もしも今季の広島が「3年連続リーグ1位で700得点以上」なら史上初の快挙になる。

 これだけの高得点が維持できる背景には攻め手の多様さがある。3連覇中の各年度本塁打、盗塁、犠打を出すと(○数字はリーグ順位)本塁打=16年153(1)、17年152(1)、18年175(2)。盗塁=16年118(1)、17年112(1)、18年95(1)。犠打=16年91(3)、17年116(1)、18年109(1)。2位以下は18年の本塁打と16年の犠打だけ。それもAクラスを外してないのだからレベルが高い。犠打の成功率も16年・805(1)、17年・782(2)、18年・753(3)と全て・750以上。長打力あり、走力あり、小技ありといったバリエーション豊かな攻撃が高い得点力を生み出す要因になっている。

 試合運びのうまさも持ち味のひとつ。3年間の初回得失点は16年71―60、17年95―72、18年115―80と常にプラス。試合開始早々、主導権を握り優位な状況を作り上げている。加えて、劣勢に立たされても反発力が強く少々のビハインドをモノともしない。3連覇中の逆転勝ちは16年45試合、17年41試合、18年41試合とリーグ最多を記録。3点差以上の逆転勝利は16年10試合、17年11試合、18年10試合と3年連続で2桁に乗せた。過去、65シーズンを見ても3年連続で3点差以上の逆転勝利が10試合以上は今回の広島だけ。簡単に勝負を諦めない粘りは、相手球団にとって脅威そのものだろう。

 丸の抜けた穴を危惧する声もあるが、外野手は人材豊富。巨人から移籍の長野、一塁も守れる松山、パワーのあるバティスタ、昨年初めて規定打席に達した野間ら実力者がひしめく。この中で注目したいのがバティスタだ。入団2年目の17年にデビュー初打席で代打本塁打すると、続く2打席目も代打本塁打。史上3人目となるプロ入り2打席連続本塁打の離れ業を披露した。同年は代打本塁打が3本、昨年は4本放ち通算7本。広島では早くも歴代8位タイに浮上した。バティスタが代打7本塁打に要した打席は69。広島の最多代打本塁打は町田公二郎の19本だが、7本目までは106打席かかった。バティスタの長打力はやはり規格外といえる。

 昨年は代打以外で21本塁打し、規定打席不足ながら25本塁打。規定打席未満の打者で25本塁打は続くゲレーロ(巨人=15本)に10本差をつけ最も多かった。セ・リーグで規定打席未満の最多本塁打打者が2位に10本差以上は、57年に広岡達朗(巨人=18本)が藤尾茂(巨人=8本)ら5人につけて以来61年ぶり2度目の珍しいケースになった。バティスタの左右投手別通算本塁打は左投手が22本で、右投手は14本。「左腕キラー」として売り出しているが、今季はどこまで存在感を示せるか。(敬称略)

◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。

続きを表示

2019年3月21日のニュース