立ち食いそば好き必見 BS日テレのグルメ番組の効能

[ 2023年4月14日 10:00 ]

17日放送の「ドランク塚地のふらっと立ち食いそば」第3回で実食する塚地武雅(C)BS日テレ
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】この番組のレギュラー化は純粋にうれしかった。BS日テレ「ドランク塚地のふらっと立ち食いそば」(月曜後10・00)。立ち食いそば好きの一人として、毎週、晩酌しながら楽しむことができる。

 お笑いコンビ「ドランクドラゴン」の塚地武雅(51)が各地の店を訪れる番組。昨年4月から計4回放送されたが、この4月からレギュラー化し、3日の初回は東京・入谷、10日の第2回は東京・上野の店が紹介され、17日の第3回は東京・三ノ輪の予定だ。

 プロデューサーの小池将大氏はレギュラー化の理由について「グルメ番組を模索する中で唯一無二の立ち位置の立ち食いそばに目を付けたこと、昨年の計4回の視聴率が良かったこと」と説明する。

 各局にグルメ番組が数多くある中で、立ち食いそばに特化したものはこれまでありそうでなかった。立ち食いそば店は誰でも気軽に入ることができ、安価で、しかも、店によって、そばの種類や天ぷらの種類が違うなど、バリエーションも豊富だ。

 構成の村上知行氏はこの番組を企画した意図について「まずは、企画を出したメンバーのみんなが立ち食いそばが好きだったということがある。立ち食いそばは食文化の中で最もサブカルチャー的なので、掘れば面白い番組になると考えた。立ち食いそば好きには秘密結社みたいなところがあって、普段、自分からはなかなか話題にしないのに誰かが少し話すと、うるさいくらいにその話に乗っかってくるところがある。『おじさんグルメの最後の聖域』という人もいる。この番組がニッチなのかどうかは分からないが、私は秘密結社の人たちを信じている」と語る。

 この番組は、塚地が店主や客と気さくに話すところがいい。おいしそうに食べる姿がいい。周辺を散策し、人々と触れ合うところがいい。落語家・柳家喬太郎の味のあるナレーションがいい。注文したそばを店の人が作る姿を丹念に映し出すところもいい。振りかえってみれば、これまで数え切れないほど立ち食いそば店を訪れながら、店主の話をちゃんと聞いたり調理過程をじっくり見たりする機会がなかった。そういう意味では、大衆的な空間を取り上げる番組でありながら意外なレア感がある。

 村上氏は「この番組には、グルメ番組を作る時によく使う『厳選された食材』『こだわり』などの言葉を使わない面白さがあると思う。例えば、立ち食いそば店には自家製そばを使っているところと袋に入ったそばを使っているところがあるが、立ち食いそば好きとしては、必ずしも自家製が良くて袋入りが悪いわけではない。天ぷらにしても、通常のグルメ番組だと揚げたてでカリッとしたものを称賛しがちだが、揚げたてじゃなくベチャッとしたものの方が好きな人もいる。冷たいコロッケがいいという人もいる。私自身も普段からこだわりがなく、つゆのだしが全く効いていなくても春菊の天ぷらがおいしくて通っている店がある。そばの中にうどんが一本くらい混ざっていてもいい…というくらいの寛容な心で番組を楽しんでいただきたい」

 この番組には、翌日どこかの店に足を運びたくなるという効果だけではなく、見ているうちに心が穏やかになるという効能がある。立ち食いそば好きは必見だし、そうじゃない人も一度見てみる価値がある。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

続きを表示

2023年4月14日のニュース