藤井王将「封じ手長考、間違えた」 7番勝負で初の2勝2敗 伏線は「2時間24分」

[ 2023年2月11日 05:19 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第4局第2日 ( 2023年2月10日    東京都立川市「SORANO HOTEL」 )

第2図
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 藤井聡太王将は封じ手以降の誤算が響き、2勝2敗のタイに戻した。羽生善治九段の攻めを受けきれず、後手番で自身初の3連敗。7度目の7番勝負で2度目の2敗目を喫した。

 形にとらわれない受けを連発した。62手目△6一銀の「一段銀」を放った第1日。この日は70手目、歩で阻止できる羽生飛車の進入を頭の丸い△2三角で防いだ。

 ところが一時金銀5枚で築いた城壁は投了時、右辺ががら空き。「マジック」と称された羽生の攻めを受け切る藤井の構想は、封じ手以降の誤算で崩壊した。

 「競った内容にできずに申し訳ない。次は良い内容にできるよう頑張っていきたい」

 降り積もる雪の中、約200人が集まった終局後の大盤解説会場で藤井は頭を下げた。誤算は自身2番目の長考、2時間24分を費やした封じ手66手目△5二同王に始まった。

 「封じ手で長考したところで間違えた。△5二同銀も考えて成算を持てなかった。読みの精度が足りなかった」。さらに△2三角に▲同飛成と応じられ失った角を藤井王の背後3一へ打たれる斬り込みを軽視した。

 「▲3一角と打たれると、思ったより苦しくてダメにした。△4一桂や△4二桂で受けるのが自然だが、それが思わしくなかった」

 最年少5冠には珍しい完敗かもしれない。全8冠中、唯一昼食休憩時に取材が入る王将戦7番勝負。藤井にとって前期から通算8局目となった7番勝負で、初めて「現局面は苦しいです」と敗勢を認めた。それでも、意地は見せた。

 90手目△6七歩(第2図)は62手目、6一に銀ではなく歩を打っていればかなわなかった。二歩になる。6二への利きを足すため、歩でも事足りたが攻めつぶされる変化を回避。同時に、将来の△6七歩を温存した。初志貫徹を果たし、羽生陣に爪痕を残した。
 1月21、22日の第2局、今月1日のA級順位戦の永瀬拓矢王座戦。後手番での連敗は3へ伸びた。

 16年10月のプロデビュー以来、後手番での連敗は6度あり、全て2で止めたが、7度目にして記録更新した。言い換えれば、戦型選択をしにくい不利をプロ7年目まで克服してきた勲章。2勝2敗になったことで確定した第6局。図らずも再来する後手番に連敗脱出のチャンスはある。(筒崎 嘉一)

 ≪自身2番目の早さで≫藤井は反撃の糸口をつかむことができず、午後4時3分に早々と投了した。

 2日制のタイトル戦でこの時刻に投了するのは、藤井が豊島将之竜王(当時)の挑戦を受けた2021年6月29、30日の王位戦第1局に次ぐ、自身2番目の早さ。

 この対局では、高い勝率を誇る先手番を振り駒で獲得しながら、午後3時35分に投了している。

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