ドラマ「映像研には手を出すな!」 乃木坂46・齋藤飛鳥の成長のあかし

[ 2020年4月21日 13:49 ]

乃木坂46の齋藤飛鳥
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 【牧 元一の孤人焦点】乃木坂46の齋藤飛鳥を見直した。こんなことを書くとファンに怒られるかもしれないが、彼女があんなにも堂々と個性豊かな演技を見せる人だとは思っていなかった。主演したTBS系のドラマ「映像研には手を出すな!」(毎週火曜深夜1・28)がとても良いのだ。

 齋藤が演じたのは、アニメ好きで人並み外れた想像力を持つ女子高生・浅草みどり。迷彩帽に迷彩リュックという奇抜ないでたちで、いつも猫背ぎみの前傾姿勢。自分のことを「わしゃ」と言い、会話では「なんじゃ?」「おぬし」「手前どもは庶民ゆえ」などと時代劇のような言葉を発し続ける。

 このドラマの原作は漫画だが、浅草みどりはまさに漫画そのもののキャラクター。俳優が実写で漫画の登場人物を演じると、何ともわざとらしくなる場合があるが、齋藤はそれがまるで等身大であるかのように的確に演じている。

 もしかしたら、齋藤自身が浅草みどりに近いキャラなのではないか。つまり、オタクっぽい人なのではないか、と思った。ところが、乃木坂の関係者に聞いてみると、「彼女の素とは、かけ離れていると思う」と否定的な答えが返ってきた。齋藤は肉好きで、好きな肉を食べるために旅行するなど凝り性の面はあるものの、オタクっぽい一面はふだん垣間見られないという。「あのキャラは、彼女が思い切って演じた結果だと思う」と、その関係者は指摘した。だとすれば、女優としての成長のあかしにほかならない。

 私が齋藤をインタビューしたのは、4年前の2016年4月。当時は西野七瀬や白石麻衣ら人気メンバーに続く「次世代メンバー」として躍進を期待されるさなかだった。私が「センター願望はありますか?」と率直に尋ねると、齋藤はきっぱり「ないです」と答え、「私がセンターになったら本当に売れなくなると思うんですよ。私は万人受けするタイプじゃないんです」と静かに話した。謙遜ではなく、本心からそう思っているようだった。

 しかし、その年の6月に発売されたシングル「裸足でSummer」で初センター。その際にもテレビ番組で「いい調子で乃木坂が来ているのに、私のせいで売れなくなっちゃう」と涙を見せていたが、その後もグループの人気が高まり続けたのは周知の通り。昨年5月発売のシングル「Sing Out!」では4度目のセンターを務め、今や、グループになくてはならない存在だ。

 「男子、三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ」という言葉がある。齋藤は女子ではあるが、その思いを強くする、女優としての成長ぶりだ。


 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在はNHKなど放送局を担当。

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2020年4月21日のニュース