球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

今季ノーヒッター8試合 身体検査導入後は1試合

[ 2021年8月22日 05:30 ]

 今季はノーヒッター(無安打無得点試合)がすでに8試合で記録された。これは2リーグ制確立以後の近代大リーグの新記録で、それ以前の多数リーグが乱立していた1884年に並ぶタイ記録という。

 ノーヒッターには「個性」があるが、カブスがドジャース戦で4投手による継投で達成したものと、ダイヤモンドバックスの左腕ギルバートが自身4試合目の登板で初先発したパドレス戦での快挙が史上4人目の「初先発ノーヒッター」として目立つ程度だ。これほど多くなると、快挙も「またか」とインパクトが弱くなってしまった。

 大記録激増の最大の理由は投手たちのパワーピッチング志向だ。大リーグ機構(MLB)の投球分析が投球回転数を増やすと球威が増すと教えた。投手たちは粘る異物を指につけ、ボールをしっかり握って投げ始めた。「野球規則の改正は常に得点が増えるように行われる。スピット・ボール(唾液をつけて投げるボール)が禁止され、マウンドが低く、ストライクゾーンは狭くされた」。規則改正の歴史は「投手受難の歴史」というのだ。こんな被害者意識が投手たちの罪悪感を薄めたと想像する。打者たちが不平を言わなかったのは、本塁打量産の打球角度を知り、フライ打球スイングを身につけて、互いにデータによる技術革新競争と思っていたのかもしれない。

 慌てたMLBが審判員に投手の身体検査を命じた6月下旬以後のノーヒッターは1試合だけ、残る7試合は全て投手身体検査以前に達成された。データが野球の生態系を乱したのだ。データ野球を後戻りさせることはできないが、毎シーズンのルール改正に戸惑うばかり。現在報じられる改正はバッテリー間の距離の短縮だ。どうなることか。(野次馬)

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