球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

あがらえない改革…それでも見たい正統派野球

[ 2022年10月23日 05:30 ]

延長18回にアストロズに1点の入ったスコアボードとファン(AP)
Photo By AP

 ようやくワールドシリーズの入り口が見えるあたりまで、カオス(混沌=こんとん=状態)のプレーオフが進んできた。出場チーム数が増えて、選手には過酷な日程だが、主催の大リーグ機構(MLB)は“確信犯”だ。

 「カオスのプレーオフは計画通りの働きをした」とメディアも拡大路線の成功を認めた。選手に過大な肉体的負担を強いるプレーオフをMLBは「予測不可能性、偉大さの肯定。限界まで伸びるシリーズ」としゃれた惹句(じゃっく)で呼ぶ。

 理屈と膏薬(こうやく)は何にでもつく。よく言うよ、と思いながらも、明け方5時開始の試合まで気になって、中継を見ればやはり面白い。いまさらながらMLBの商品価値の高さを思い知らされた。

 来季は試合進行に秒単位の時間制限(ピッチクロック)が加えられる新ルールが導入される。進行中の拡大路線は観客動員も中継視聴率も好調というから、さらなる味付けを加えて拡大プレーオフ路線の続行も確実だ。

 選手がプレーの熱をあげたのはさすがだ。ベストゲームは21年ぶりにプレーオフに出場し、地区シリーズでアストロズに3連敗したマリナーズの最後の試合だ。延長18回、6時間22分の激闘。21年ぶりに本拠地シアトルで見たポストシーズンの試合の敗戦を、拍手して称える4万7690人のファンのニュース映像が感動的だった。

 「これが正統派野球」とロブ・マンフレッド・コミッショナーに言いたいが、「時間が長過ぎる」の一言で切り捨てられるだろう。時代は変わった。それでも、野球の懐は深い。時に生まれる正統派野球を求めて、改革野球に付き合っていくしかない。(野次馬)

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