球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

「野球の泥」追放 夢より効率重視のボール開発

[ 2022年7月31日 05:30 ]

 「大リーグ野球とは、10%のビジネス、20%のスポーツ、30%の儀式、40%の神話の世界」と言われてきた。だが、「ビジネスが全て」の現コミッショナー、ロブ・マンフレッド氏の改革は、「儀式と伝統」の排除が多い。ニューヨーク・タイムズ紙は、1世紀以上続く「野球の泥」の追放と報じた。公式戦に使われる新ボールは、縫い糸につくろうや革についたなめし薬品などで滑りやすい。これを落とし、白色を保ちながら選手に確かな握りを与える。

 その「夢の泥」はニュージャージー州のデラウェア川岸の秘密の場所から採取される。泥の発見者は、1910年代にホワイトソックスなどで内野手としてプレーしたレナ・ブラックバーン。1938年に副業として泥の販売を始め、球界で評判になり、「レナ・ブラックバーン社」を設立。家族、友人らで経営は引き継がれ現在に至る。

 大リーグ機構(MLB)が買い上げ、球団の注文に応じて配給する。会社には年2万ドル(約266万円)程度が入るらしい。もちろん個人にも販売するが「とても商売になるような仕事ではない。しかし、大リーグ野球の一翼を担っているのが誇りで楽しかった…」。現経営者は未来は短いと覚悟する。これまで会社を存続できたこと自体が大リーグの器量の大きさだったが、数字と効率とデータが全ての今は許されない。公認球はローリングス社製が、数年前にMLBの資本が入り、現在は買収されたも同然。「泥を使わないボールの開発は、多くの研究者を投入した優先事項」とはMLB関係者。効率重視の息苦しい時代。MLBが売るのは「夢」と思うが、「甘い」と一蹴されるはず。(野次馬)

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