球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

米国の「伝説、神話」大リーグの記録には深い背景

[ 2021年6月6日 05:30 ]

 大リーグの歴史の長さと奥深さを示す「大記録」が、5月29日のツインズ―ロイヤルズ戦で生まれた。初回に左前打を放ったツ軍ドナルドソンがクルーズの二塁打で生還。これが大リーグ通算200万得点目だった。米メディアは「すぐ消え、忘れられる大記録」と楽しげに報じた。

 大リーグの記録は深い背景を持っている。大リーグ最初の得点は1876年4月22日にボストン・レッドストッキングス(現ブレーブス)の守備位置不明のテム・マクギンレイとされる。当時の球界は米国東北部に散在した400を超える球団が創設、消滅、合併を繰り返し、正確な記録発掘は容易ではない。

 今に続くナショナル・リーグが1876年に誕生。これを大リーグの起点としたのは後世の話で、1901年アメリカン・リーグが結成され2リーグ制に。1969年「プロ野球100周年」には、ナ・ア両リーグ発足時に存在し、後に消滅した4リーグの選手と記録を大リーグに取り込み、記録は伝説の影を帯びた。そして昨季、「消えたニグロ・リーグ(黒人リーグ)の選手と記録も大リーグ扱い」の決定。「野球は米国の伝説、神話」だ。ニグロ・リーグ記録も伝説の石垣に加わった。

 では、公式記録はどうなるか。大リーグ機構(MLB)は1913年に創設された各スポーツのデータをメディアや企業に売るエライアス・スポーツ局に委託している。これが「公式記録」だ。近年はデータサイト「ベースボール・レファレンス」が高評価で、メディアはよく使う。今回の累計得点もエライアスより多く、200万得点はだいぶ前に達成されていたのでは…と併記のメディアもあった。

 MLBがアバウトなのではない。野球文化を幅広く捉える姿勢や「伝説・神話」に懐が深いと思いたい。(野次馬)

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