球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

試合進行を時計に任せる規則改定 人間関係希薄なネット社会を反映

[ 2022年9月18日 05:30 ]

 大リーグでは来季に向けた野球規則の改定が発表された。試合時間短縮にとりつかれたコミッショナーのロブ・マンフレッド氏には満足の改定だろう。投手は走者なしで15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投球…など秒単位での選手の動きの規制は選手や審判員に負担をかけるが、1、2年のうちのロボット審判導入に向けた“つなぎ改定”だろう。選手会は反対したが、一つだけ認めたのが危険防止のベース拡大。同じ改定案を複数回協議し、合意なしなら大リーグ機構(MLB)案の採用が習慣法ではなかったか?

 そもそも野球は秒単位で測るような精緻な競技ではなく、もっと「アバウト」な、と言うといいかげんのようだが、懐深い競技のはず。団体球技の中では「変な=ユニークな」競技だ。守る側がボールをコントロール(支配)している競技が他にあるだろうか。守りは慎重に…は競技の常識、まして守る側がボールを持っている。時間がかかるのが野球の常だ。そして野球は時計時間を採用せず、試合の進行はアウトカウントの数で計ってきた。試合進行の調節は高性能機器ではなく審判員(人間)に任せる昔に戻せば、おそらく現在より監督、選手との衝突は増えるだろうが、「野球はアクションが少なすぎる」というマンフレッド氏の不満解消にもなるはず。審判員を機器のメッセンジャーにおとしめ、そして試合は、本塁打と三振とシフトの単純野球にしてしまった。

 「野球は世の中を映す鏡」という。ネット社会で人間関係が希薄になった社会を映し出したのは皮肉な成り行きというしかない。(野次馬)

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