球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

15億円手放し慈善組織設立したスーパースター

[ 2021年4月25日 05:30 ]

 「ちょっとイイ話」を2つ紹介する。

 まず、12年6カ月と25日かけて大リーグに再昇格したブレーブスのショーン・カズマー内野手(36)だ。17日のカブス戦の5回、代打で併殺打に倒れた。これがパドレス在籍当時、24歳で大リーグ初昇格した08年の9月23日が最後のプレーになって以来の大リーグ再出場。この間の日数は4589日、在籍球団はパドレス、マリナーズ、メッツ、ブレーブスの傘下マイナー(3A)の4球団。1106試合に出場し、捕手以外のポジション全てを経験した。「最初の昇格と今度の昇格とで感想に違いは?」と記者たち。「素晴らしいことを実現した幸福感ではちきれそうだ。昔もそう思ったはず…」。夢を諦めなかったのが凄い。

 もう一つはオールスター2度選出のスーパースターの決断。ロッキーズのイアン・デスモンド外野手(35)は昨季開幕前の6月30日に球団にオプトアウト(契約から離脱)を申し出て年俸約6億円を手放した。今季も年俸約8億6000万円を捨てた。理由は妻と4人の子供のコロナ禍回避もあるが、主眼は慈善運動組織の設立だ。デスモンドの母は白人、黒人の父は彼が幼いうちに亡くなった。自分は肌の色が薄い褐色で、子供の頃から黒人、白人どちらに属するのかで悩んだ。昨季、白人警官に黒人が殺され「黒人の命は大切だ」運動が湧き上がり、進路が決まった。「黒人、白人の子供たちが何でも話せる慈善組織づくりだ」。デスモンドの住むフロリダ州はさまざまな人種が交じるサラダボウル州。隣人の引退した白人実業家と「ニュータウン・コネクション」計画をSNSで発表、反響を呼んだ。生活の経済的保障は固めただろうが、先は分からない。デスモンドは「新しい挑戦が好き」と格好いい。(野次馬)

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