球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

時がたてば規則は変わる 改定論者も変わる

[ 2022年4月10日 02:30 ]

 新シーズンが始まった。日本球界同様、新型コロナウイルスを警戒しながらの開催だが、日本との大きな違いはマスク姿の観客がほとんどいないこと。国全体が防疫より社会活動、経済活動優先だ。その大リーグ機構(MLB)の今季の目玉は「野球規則」に指名打者(DH)と先発投手を同じ選手が務められる「大谷ルール」を加えたこと。これは楽しみだが、「野球規則」の改定に関しては用心が必要だ。来シーズンからはベースを大きくして塁間距離を縮めるなどの“暴挙”が控えているらしい。

 バッテリー間の距離でもそうだが、およそ130年間プレーを支え、仕切ってきた「野球規則」の定める舞台の数値を動かすと野球が根本から変わってしまいかねない。昨年、MLBの実験場になっている3Aで、本塁から投球板までの距離を30センチほど延ばした。これで球威を抑え三振を減らすテストだったが、逆に三振が増えてしまった。「変化球の変化の幅が大きくなり打者が対応しきれなかった」とリーグ関係者。実験継続だ。ことほどさように歴史を背負った規則の改定は難しい。

 塁間距離では1年生記者時代の思い出がある。三原脩監督(故人、巨人、西鉄、大洋で日本一、殿堂入り)の近鉄1年目。近鉄担当が休みの“警戒”で球場に行くと、監督は無言の記者たちに囲まれ、塁間距離のクロスプレーを生む精妙さを話していた。誰もしゃべらないので、「米国人用の距離だから日本人向きに距離を縮めたらどうでしょう」と言ったら、大笑いして両肩をどんどん叩かれた。半世紀以上前の話、当時の改定論者は、今は改定絶対反対の老人、自分でも苦笑いの思い出だ。(野次馬)

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