球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

自分との「孤独な戦い」エンゼルス・大谷こそMVP

[ 2022年9月4日 05:30 ]

 ア・リーグのMVPはエンゼルス・大谷か、ヤンキース・ジャッジか、予想論争がしきりだ。変な話だ。大谷で決まりだろう。比較の対象がなくて100年も前のベーブ・ルースが持ち出された選手だ。今や大谷は独立独歩の無人の道を歩いている。強いて相手を探せば「昨季の自分」ではないか。

 昨年は「まるで野球のラインホルト・メスナー」と思った。イタリアの登山家、ヒマラヤ山脈には14座の8000メートル峰があるが、最高峰のエベレストの単独登頂をはじめ、世界で初めて14座全ての頂上に立った我がヒーロー。修行僧のようで明るさ、楽しさとは無縁だが、大谷に重なるのは「孤独な戦い」というところだ。勝てないチームに大谷はストレスをためているはずだが、それを全く見せない明るいストイックさに驚嘆する。

 MVPの対抗馬のジャッジだが、同じヤンキースの先輩ロジャー・マリスが持つ「ア・リーグのシーズン最多本塁打記録61号を破れば」のただし書き付きが弱い。そこでMVPは大谷の連続受賞と思う。

 1941年のア・リーグMVP争いは凄かった。ヤンキースのジョー・ディマジオは連続試合安打を続け、レッドソックスのテッド・ウィリアムズは打率4割の壁に挑戦。レ軍監督は4割を四捨五入で達成できる境界まで打率が下がるとウィリアムズを休ませようとするが、本人は怒って強行出場。打率・406で最後の4割打者となる。MVPはディマジオの56試合連続安打が射止めた。2人の記録は今も残るが、大谷にはライバルなしの孤独な戦いの方が格好良いのではないか。(野次馬)

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