球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

金権的にして“人権的”フィリーズ社長 巧みな手腕

[ 2022年11月6日 05:30 ]

 熱戦の裏でフィリーズの球団社長兼編成本部長が話題だ。デーブ・ドンブロウスキー氏(66)。25年のフロント幹部生活の間、4球団をワールドシリーズに導いた球史ただ一人の人物だ。

 まずマーリンズで97年に優勝、敗れはしたがタイガースで06、12年と2度出場。18年にレッドソックスで自身2度目のワールドシリーズ制覇を成し遂げ、翌年解任された。「レッドソックスだけが私を公平に扱わなかった」と今も怒りを隠さない。20年12月にフィリーズに招かれ、早くも晴れ舞台に登場した。

 球界内の評判は「チームづくりの手腕は認めるが、金をかけすぎる…」。主砲のハーパーは「信じられないような球団社長だ。今のチームは彼のベビー」と言う。柱になる選手とは長期契約をいとわず。20人ものデータ分析職員による資料精査で狙いを絞り、積極財政出動によるチームづくり。金権的に映るが、「伝統的野球を重んじる球団経営者」とニューヨーク・タイムズ紙は伝える。

 特筆されるのは人事の巧みさ。選手と衝突したジョー・ジラルディ監督を解任し、ロブ・トムソン・ベンチコーチを代行監督に抜てき。短期間で勝率5割に戻すと「代行」の肩書を外し、プレーオフ進出で24年まで契約延長した。「ここまで細かく気を配るトップは珍しい」と野球メディア。

 球界入りは70年代後半、ホワイトソックス傘下マイナーでのフロント業務修業から。当時一人で中南米諸国に張り巡らせ、今に続くスカウト網は球界では語り草だ。そして選手への心配り。「選手をロボット扱いにしてきた球界に反省の空気が生まれている」という。(野次馬)

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