球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

殿堂入りに必須 来年も問われる“誠実さ”

[ 2022年1月30日 05:30 ]

米国殿堂入りメンバーに選出され、喜ぶデービッド・オルティス氏(右から2人目、AP)
Photo By AP

 殿堂入り報道での異色は、スポーツ・イラストレーテッド(SI)誌の「殿堂入りには“誠実さ”が必要」の論評だ。殿堂は大リーグのショーウインドー、傲岸(ごうがん)不遜、誠実さに疑問付きの大物が入っては困る。「現代は“誠実さ”が軽んじられる」とハーバード大学倫理学教授。「激しい競争社会で富と名声を得るには不正も仕方がないと多くの学生が考え、悩んでいる」という。SI誌の記者は、これは大リーグの「ステロイド時代」を経験したファン、記者、選手の悩みに重なる、という考察だ。

 論評同様、野球関係者の敬称は抜きにするが、結論を言えば、今回のオルティス当選、ボンズ、クレメンス落選で際どく「ホール・オブ・フェイム=名誉の殿堂」の名誉が守られた。ボンズとクレメンスは殿堂入り候補リストに載った10年の間に30%の記者投票獲得から60%超まで得票率を上げ、75%の合格に迫った。しかし、それは2人の現役時代を知らぬ若い記者が増え、記録だけに頼ったため。全米野球記者協会の投票規則は「誠実さ、キャラクターも考慮のこと」としている。記録頼りなら投票の必要はない。

 個人的感想だが、オルティスに一目置いたのは、13年のボストンマラソン・テロ事件だ。ゴール付近に爆発物が仕掛けられ死者3人、負傷者260人。ショックと恐怖のなか、オルティスの演説。「ボストンは問題山積みのろくでもない街(Fで始まる禁止言葉)だが、テロには負けない。ボストン・ストロング!」。候補名簿に載った初年度当選は当然だ。

 さて、記者協会は来年も問題を抱える。名簿にカルロス・ベルトランが加わる。メッツ監督に就任、何もしないうちにアストロズ時代のサイン盗みの首謀者と発覚、辞任=解任だ。記者協会、どうするか。(野次馬)

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