球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

「無益なロックアウト」の結末は…

[ 2021年12月12日 05:30 ]

 ロックアウトで来季への動きが止まった。スポーツ・イラストレーテッド誌は現状を「危険なチキンゲーム」とみる。

 距離をおいて向かい合う車が全速で相手に向かって突進、衝突寸前にハンドルを切ったドライバーを「臆病者=チキン」とさげすむ若者たちの遊び。オーナー側(MLB=大リーグ機構)と選手会の紛争をこの遊びに重ね「無益なロックアウト」と切り捨てた。

 MLBの球団施設から選手を閉め出す圧力は、オフで施設を使用しない選手には空振りだ。「選手が圧力を本気で受けるのは3月。開幕は4月、本番の試合には少なくとも3週間のキャンプが必要だから」。そして同誌は、若手優先、30歳以上の選手を軽視する最近の球団の経営姿勢が「選手間に分断を生み、状況を悪くした」と指摘する。

 記事で読み取れるのは「野球の危機」への警鐘だ。選手会のストライキ、MLBのロックアウトを区別せず、「野球ビジネス業務を止める愚行」とし、「労使間の平和など忘れろ。今必要なのは大リーグの近代化だ」。

 労使紛争のむなしさを痛感したのは、94年のワールドシリーズ(WS)を中止にし、95年キャンプにずれ込んだ選手ストライキ。怒ったタイガースのオーナーがOB、マイナー選手でチームを編成し「キャンプを続けろ」と監督に命じた。監督は両リーグでWSを制したスパーキー・アンダーソン。球界は息をのんだが、名将は「私の契約書には“大リーグチームの指揮を”とある。偽物には関わらない」と帰宅した。結局、アンダーソンは95年シーズン終了後に「引退」させられ、労使紛争の犠牲者となった。

 今回の「野球ビジネスを止めかねない愚行」はどんな決着を迎えるのだろうか。(野次馬)

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