球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

気の毒になる…電子機器の発達で審判員の権威失墜

[ 2022年5月15日 05:30 ]

 選手を退場させた審判員が大リーグ機構(MLB)から処分され、ネット上で謝罪する珍事が起きた。主役はダン・ベリーノ審判員。マーリンズ戦の初回を投げたダイヤモンドバックスのバムガーナー投手の手の異物検査を一塁塁審として担当した。これに投手が「F×××(放送禁止用語)検査」と言った。ベリーノ塁審は退場を宣告。先発投手が初回で消え、騒ぎになった。

 MLBはこれを過剰処分としベリーノ審判員に罰金を科した。これで一件落着のはずが、2日後ネット上に「謝罪の告白」が。「15年前、MLBの審判員になった時、全ての試合で自分の子供が観客席の最前列で見ているつもりで職務を果たせと教わった。今回は忍耐に欠けた判断をした。心から謝罪する」。MLBのやらせだろう。

 ネットサーフィンをすると連日、中継画像や公式データを取り込んで、審判員、MLB批判、提言の洪水、それがファンの楽しみになっているらしい。野球だけでなく、全てのスポーツで決定的瞬間の判定は精密光学機器と電子機器に委ねられ、審判員の地位は下がるばかりだ。

 半世紀近く前、MLBの審判員関係の本で見つけたアンパイアの資格が愉快だ。「船長の権威、判事の思慮、一流競技者の肉体、ハンターの目を持ち、併せて兵士の勇気、聖人の忍耐力、周囲の罵声に耐えるストイックさ、延長戦にも乱されることのない集中力、さらにファウルを喉に当てても痛がらないタフネスを所有する…」。もちろんユーモアで、こんな凄い男たちの仕事、たまに起こる「誤審」は大目に見て、とのファンへの呼び掛けだ。高性能の機器が生活の余裕を奪う現代社会。その最前線のアンパイアの権威喪失、気の毒になる。 (野次馬)

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