球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

王者アストロズ 懸念は「ノー気配り」オーナー

[ 2022年11月20日 02:30 ]

 アストロズのオーナー、ジム・クレーン氏(68)の現場への“口出し”でワールドシリーズ優勝GMのジェームズ・クリック氏が辞任した。不正なサイン盗み事件後の混乱したチームを3年で世界一にした功労者に敬意なしの1年契約にGMがキレて…。スポーツ・イラストレーテッド(SI誌)の女性記者の特ダネだ。

 オーナーと“女性軍団”とは昔から折り合いが悪い。クレーン氏がア軍買収に乗り出した11年、当時のコミッショナー、バド・セリグ氏は「大リーグ球団を所有するには不適」と「ノー回答」。クレーン氏は大運送会社経営者で、女性従業員への差別的待遇が問題視されていた。「女性は野球の大切なファン」との大リーグ機構(MLB)の拒否回答にクレーン氏は全女性従業員の待遇改善をしてMLB加盟を許された。だが、オーナーのマッチョ(男性優位)思考はチームに反映され、球団職員の女性記者への嫌がらせでア軍は何度もMLBの「強力な指導」対象になった。

 「気配りなし」のオーナーの球団運営は来季に暗い影を落とす。今季のワールドシリーズは、年度契約の最終日10月31日をはみ出して行われた。王座を決めた5日までは“サービス残業”とでも思ったのか、「オーナーは何もしなかった」とSI誌。今季とは別物の新ルールで行われる来季、新チームづくりにア軍は出遅れた。

 ところがア軍の本拠地ヒューストンの地元紙のコラムは「ア軍の優位は二塁アルテューベ、三塁ブレグマンがFAになる24年オフまで揺るがない。オーナーの口出しはいつものこと。GMが適当に合わせればOKさ」と平然。「野球で最も危険な時は頂点に立った瞬間から始まる」とは大リーグの格言。ア軍は今そこにいる。波乱の予感漂う来季は見ものだ。(野次馬)

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