球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

マンフレッド氏に批判の声…「野球愛」ゼロのトップでは交渉ますます泥沼に

[ 2022年3月6日 05:30 ]

マンフレッド・コミッショナー(AP)
Photo By AP

 大リーグ機構(MLB)コミッショナーのロブ・マンフレッド氏にメディアの批判が集まる。当事者意識のなさの指摘だ。「私はこれまで4度の労使争議に携わり経験は十分」と反論するが、それはバド・セリグ前コミッショナーの下で交渉役として関わっただけのこと。メディアの評価は「ボスの指示を巧みに処理した有能なNo・2」だ。

 マンフレッド氏とセリグ氏とでは、野球への姿勢が違いすぎる。セリグ氏は、少数のオーナーが一族経営で続けた野球業を巨大な娯楽産業に生まれ変わらせた“功労者”だ。その一方で、オーナーたちのクーデターを主導しコミッショナーを辞任させ、その椅子を奪った。読者の中には20年前に亡くなった伊東一雄さん(愛称パンチョ伊東、元パ・リーグ広報部長)を覚えている方もいるだろう。パンチョさんはセリグ氏と親しかった。あまりのビジネス路線に批判コラムを書くと、パンチョさんは「お前みたいな記者をセリグは呼び寄せ、彼のヒーロー、ハンク・アーロンの話を聞かせ、けむに巻き、味方に抱えこむ。本物の野球好きだよ」と“弁護”した。

 奪った球界トップの椅子にセリグ氏はすぐ座らない。日本で「コミッショナー代行」として報じた8年間は「大リーグ諮問会議議長」だ。セリグ氏は、下克上の秩序破壊者で「球界内政治に配慮し時間を置いた」とパンチョさん。その野球好きは、住んでいるミルウォーキーからブレーブスがアトランタに去ったのを悲しみ、破産したシアトル・パイロッツを買い取り、移転させ、ブルワーズとしたことで分かる。

 「セリグ改革」の延長に今の強硬ビジネス路線があるが、「野球愛」ゼロのトップでは交渉の泥沼は深まるばかり。どこまで続くぬかるみぞ…。(野次馬)

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